更新日:2023年05月24日 15:00
お金

コロナ不況を味方につけるメガネのJINS、過去2度の経営危機を乗り越え…

ヒット商品はあとが怖い。だから…

 JINSは考えました。  ヒット商品に頼りすぎず、定番品を増やすことでセール品の比率を下げる。こうすれば、安定した売上が見込めます。具体的に行ったのは、2つの施策。  一つは、商品のバリエーションを豊富にすること。具体的には、4900円、5900円の商品以外に、7900円や9900円の高額商品の比率を増やすことで客単価をアップさせたのです。  2つ目は、人材の強化。  その場でメガネを試着して購入、持ち帰ることができる手軽さがJINSの魅力です。そのためには、検眼や眼鏡の加工ができる人材が各店舗に必要になります。当時、JINSにはこの人材が不足していました。結果、週末の混雑時は待ち時間が数時間にもなり、顧客のニーズに応えられていませんでした。そこで同社は正社員を増やし、店舗に立つ社員の教育も強化。知識豊富なスタッフを増やしたのです。その証拠は採用状況にも表れています。  2014年度のJINSの採用人数は875人なのに対し、2015年にはその倍近くの1524人に採用人数を増強しています。さらに、2018年度は2047人を雇用。  この約15年のJINSの歴史を振り返ると、低価格化→JINS PCに代表されるヒット商品の投入→客単価上昇→スタッフの質の向上とその軌道修正を振り返ることができます。

経営の視野を広げる、群馬の雄

 また、現在のJINSでは新商品にも期待が寄せられます。  今月5日には、累計販売本数2000万本を突破した、「Airframe(エアフレーム)」の新作「Airframe Hingeless(エアフレーム ヒンジレス)」を発売。軽量かつ頑丈な素材を使い、テレビCMには俳優の長谷川博己さんを起用しています。  さらに、同社は現在、バイオレットライトを用いた近視の進行を抑えるメガネ型医療機器の開発を進めています。  JINSは、「近視のない世界」の実現に取り組んでいるのです。これまで、新たな需要をつくりだし、メガネ市場全体のパイを広げてきたJINS。さらに、この先は「見る」という行為から生まれる人の感情や集中力に対してソリューションを提供する。  集中を計測できるメガネ型ウエアラブルデバイス「JINS MEME(ジンズ・ミーム)」で実施した実験により、「オフィスで集中できていない」というデータに基づいて作られた『Think Lab(シンク・ラボ)』を2017年12月に飯田橋にオープン。  さらに、「ソロワーキングスペース」をテーマにしたThink Lab汐留(Think Lab初のB to Cの店舗)を2月3日に汐留にオープンしています。

“集中を科学する”ラボとして展開している「Think Lab飯田橋」

 ひとりで深く考えるためのソロワーキングスペース『Think Lab(シンク・ラボ)汐留』は集中を計測できるメガネ型ウエアラブルデバイス「JINS MEME(ジンズ・ミーム)」で実施した実験により、「オフィスで集中できていない」というデータに基づいて作られた空間です。  JINSの成長や戦略には常に「科学」に基づいた根拠があるのです。ここから先は「見る」にドメインを置き、まさに、これからも大きな“視野”で市場の成長を見据えています。 <文/馬渕磨理子>
経済アナリスト/一般社団法人 日本金融経済研究所・代表理事。(株)フィスコのシニアアナリストとして日本株の個別銘柄を各メディアで執筆。また、ベンチャー企業の(株)日本クラウドキャピタルでベンチャー業界のアナリスト業務を担う。著書『5万円からでも始められる 黒字転換2倍株で勝つ投資術』Twitter@marikomabuchi
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