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街金業者が見たコロナ恐慌。カネを貸した人と断った人、違いはどこに?

倒産・廃業寸前……水商売から町工場、スポーツ選手の苦境とは?

 新型コロナでパニック状態が続く日本。特に経済への打撃は大きいが、中小企業や個人事業主という経済の最前線にいる人たちはどうなっているのか。街金が見た彼らの苦境!
街金業者が見たコロナ恐慌

緊急事態宣言後の新宿・歌舞伎町。街から人が消えた

カネを貸した人と断った人。どこに違いがあったのか?

 いまだ終息の見えない新型コロナウイルス。4月16日からは、緊急事態宣言が全国に拡大され、本格的な自粛生活に入った。休業要請の対象となったナイトクラブやバー、ネットカフェはもちろん、時短営業を要請された飲食店もモロに打撃を受けている。ほかにもあらゆる業種で休業・自粛による売り上げ減少が報告されており、特に中小企業やフリーランスにとって損害は甚大だ。  こうしたなか、「3月以降、融資希望者が明らかに増えています」と語るのはツイッターでも人気の「街金」テツクル氏だ。今まで主に零細企業の経営者や個人事業主に事業用資金の貸し付けを行ってきた同氏。年利は15%だが、スピーディに融資をするため、支払いに追われる業者が多く駆け込んでくる。不景気が稼ぎ時というだけあり、アポイントが毎日のように入るという。テツクル氏に、コロナ恐慌の最前線を聞いた。  * * * ――やはり飲食店が一番、多いと聞きました。 テツクル:真っ先に来たのが都心から30分ほどの住宅街にある大衆居酒屋のオーナー。駅から徒歩数分と立地もよく、20年以上やっている人気店。単価が安く回転させて利益を出す商法だから、人が入っているうちはいい。でも、約70席とハコが大きいことが、今回の大打撃に繫がったようです。来店者が減ると、途端に明日のビールや魚を仕入れるカネに困るようになった。外国人の店員に払う給料もないらしい。帳簿を確認すると、明らかに売り上げが減っている。だけど、コロナ禍はいつ収まるのか予測もつかないし、短期での回収が見込めないため、残念ながらお断りしました。 ――融資したのはどんなケースですか? テツクル:都内の高級キャバクラが、カードの売り上げ約1200万円を担保に借り入れを申し込んできた。700万円融資しましたよ。あと200万円の融資を希望していた飲食店。ここは都内で小洒落たダイニングを3~4店舗やってる社長さん。政策金融公庫から500万円の融資が確定していたんだけど「繋ぎ」が必要だということでウチに来た。いずれも短期回収が確実だったのが決め手になった。  飲食店不況の影響を受けている業種もあります。ある都内の店舗系内装業者で、工事をして店は完成したけれど、コロナでオープンできず、代金を回収できないと。そこは下請けでやっていて、ひ孫請けしてる職人さんたちに給料が払えない状態。1500万円の融資を希望していましたが、断りました。
街金業者が見たコロナ恐慌

営業時間の短縮などを要請されている飲食店。店員はどうなるのか

イベント系やインバウンドも

――大型イベントの開催中止などが相次いていますが、それらの関連はどうですか? テツクル:イベントを中止すれば当然、負担を被る事業者が出てきます。地域密着型の中小企業は卒業式や入学式、花見、五輪関連の地域イベントがすべてなくなり、相当厳しい。この前もある看板関係の町工場が窮状を訴えてきました。すでにいくつかの借金があり、借り換えと一本化を希望してきたんですが、その額は3000万円。担保に自宅を出してきましたが、もう3番抵当までついているんですよ。これだと担保があっても融資は厳しい。  イベントに出演する側の人間もいますね。ある有名な元スポーツ選手だったんですが、ジム兼事務所の家賃が払えないと500万円の融資を申し込んできました。それから映像制作会社も相談にきましたね。「下請けに払うお金がないから2000万円貸してほしい」と。広告代理店からの入金予定を見せてもらったんですが、そこから直接ウチにギャラを振り込んでくれるわけではないので、断りました。一昔前まではギャラの入る口座を押さえることで融資ができたんですが、今は貸金業法により債務者の通帳などを預かることは禁止されているので将来の入金は担保にならないんです。担保になるのは先に言ったクレジットカードの売り上げや他からの融資が決まっているケース、それから不動産があるかどうかですかね。 ――被害の大きいインバウンド関連で融資を求めてきた人は? テツクル:ブローカーから持ち込まれたケースですが、関東の温泉地のホテルから物件を担保に相談がありましたね。中国人観光客が多かったけれど、2月以降一気に減り経営が厳しいと。客室数も200のけっこう大きいホテルで、希望額は8000万円でした。でもね、ウチの金利で借りるとどうなるか社長も想像はついているんですよ。融資が決まればキックバックが入るため嬉々として喋るブローカーの横で、社長の面持ちは暗く、言葉数も少なかった。従業員の生活を心配し、ブローカーにすがって破産覚悟でやってきたんでしょうね。 ――ツイッターで有名なテツクルさんのもとにはSNS経由で融資してほしいと言ってくる人もいると聞きました。このコロナ禍でそういう相談も増えましたか? テツクル:キャバ嬢やホスト、スカウトなんか多いですね。でも「いくらなら貸してくれますか~?」とタメ口で呑気にダイレクトメールを送りつけてくる人が多いですから、貸しませんよ(笑)。キャバ嬢でもしっかり太客を持ち、営業努力をしているタイプなら貸すかもしれませんが、そういうコからは来ないですね。あと、身元のしっかりしているサラリーマンなら貸すこともあります。 ――コロナ恐慌はこの後、どうなっていくと思いますか? テツクル:この状態が長引いて賃料の未払いが膨らむと不動産オーナーなどが連鎖的にダメージを受けていくでしょう。飲食店が入る雑居ビルのオーナーや、投資用アパートの大家さんなどなど。不動産業界はリーマン・ショック以上の打撃になる可能性があります。ネット系の娯楽やEC、農業など一部の業界以外は、全部厳しいと思いますよ。 【テツクル氏】 都内で貸金業を営む。債務者と債権者の日常をつぶやくツイッターが人気。著書に『ぼく、街金やってます』(ベストセラーズ)。5月よりnoteにて漫画連載スタート予定
街金業者が見たコロナ恐慌

『ぼく、街金やってます』

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コロナ禍で悪質な融資ブローカーが急増!?
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フリーライター。性風俗、女性問題、金融犯罪などを中心に執筆。未婚で1児を出産後、結婚。3児の母。愛人に走る女性をルポした『副業愛人』など著書多数。女性のお金や生活事情に関するルポ、詐欺事件を多く扱う。性とお金に対する欲望と向き合う人間をフィールドワークし、取材執筆を続けている。日本プロダクション協会の監事も勤めている

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