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ソフトバンクはLINEを買収して何がしたかったのか?

 ソフトバンクは単なる通信会社ではないことは、すでに前回の記事でご紹介した通りです  昨年のLINEとの経営統合は記憶に新しいと思いますが、ソフトバンクは一体何を目指しているのでしょうか。今回は、通信事業にフォーカスを当て、同社の目指すところを明らかにしていきます。

ソフトバンクは日本の何を変えたのか?

 今でこそ、会社を“爆買い”しているイメージのソフトバンクですが、少し前までは一つのケータイ会社というイメージが強かったのではないでしょうか。そんな通信事業において、ソフトバンクは下記の2つの偉業を成し遂げてきました。 【ソフトバンクが成し遂げた偉業】 1:ブロードバンドの価格破壊(2001年) 2:携帯電話からスマートフォンへのシフト(2008年)  ときは2001年。1985年の通信自由化以来、NTTが日本の通信網の大半のシェアを持っていたこの時代において、ソフトバンクのヤフーBBによるブロードバンド事業参入は業界に大きな衝撃をもたらしました。というのも、それまで日本の通信環境は遅く、値段が高いことが嘆かれていました。  これに大きな問題意識を抱えていた孫社長は、ADSL事業に参入し、安くて早い通信環境を日本に提供しました。さらに当時ガラケーが全盛期のなかで、2008年、日本にiPhoneを持ち込み普及させました。  今や、だれもが普通に使用しているスマートフォンと高速の通信環境はソフトバンクが築き上げたものと言っても過言ではありません。では、なぜソフトバンクはいち早くこのような取り組みを進めていたのか。それは、同社は「通信プラットフォーマー」を目指し続けているからにほかなりません。

LINE経営統合の背景にあった中国の覇権戦争

 では、通信プラットフォーマーを制するため必要なものは何でしょうか。それは、あらゆるコミュニケーションや生活の入口である決済を押さえること。その努力はソフトバンクの決済事業の歴史を見ても明らかです。 【ソフトバンクの直近の決済史】 2018年6月 PayPay設立。ソフトバンクとヤフー(現Zホールディングス)それぞれ50%の出資で設立。 2019年5月 ソフトバンクグループがPayPayへ追加出資。ソフトバンクグループが50%となりPayPayの筆頭株主となる。 2019年4月 ヤフーは持株会社「Zホールディングス」を設立しその下にヤフーを置くと発表 2019年5月 ソフトバンクがヤフーを連結子会社化 2019年11月 ヤフーとLINEの経営統合しZホールディングスの傘下に入ると発表  たった2年だけでも激動なことがわかります。  そんな決済を制する者が通信プラットフォーマーを制する、という孫社長の考えは中国でアリババとテンセントの決済覇権戦争を見て確信したものです。アリババは、日本で言えばAmazonや楽天、メルカリ、ウィーチャットはLINEと思っていただければわかりやすいです。  中国市場の「ペイ」市場を見てみると、2015年ごろまでは、スマホ決済市場においてはアリババの「アリペイ」が先行していました。一方、中国のテンセントの決済アプリであるウィーチャットペイが登場したのは、アリペイから9年後のこと。しかし、後発であったにもかかわらず、ウィーチャットペイはアリペイと肩を並べるにまで、成長しました。2019年の両社のシェアはアリペイが53.2%、ウィーチャットペイが39.4%です。この猛追の背景には、ウィーチャットペイが1日に何度も触るコミュニケーションアプリに連動していることが挙げられます。  一方、アリペイは商品を購入する時にだけ訪れるECサイトに紐づいています。当然、コミュニケーションアプリの方が使用する頻度が高く、後発であってもアリペイに迫る勢いなのは納得でしょう。  一日にLINEを開く時間と、Amazonを開く時間、どちらが多いかと言えば、どう考えてもLINEですよね。そこで、孫社長は日本のキャッシュレス市場のシェアを取るために、LINEに目をつけたのです。  それまで、日本のPayPayとLINE Payは競合関係にありました。そんな無駄な“ペイ戦争”の消耗戦をLINE買収によってなくすことで、スーパーアプリ経済圏をいち早く作り上げようとしたのです。
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LINE統合でこれから変わること
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