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1兆円超えの大赤字…ソフトバンクはヤバい会社なのか?

 ソフトバンクグループは3月23日、保有する子会社の株式など資産の最大4兆5000億円分を売却か現金化し、最大2兆円を自己株式取得に充てる計画を発表しました。  これを受けて、アメリカの企業格付け機関であるムーディーズは「市場が低迷する中で、ソフトバンクが資産売却を実行することは容易ではない」と判断し、格付けを「Ba1」から「Ba3」に2段階引き下げました。格付けとは、企業としての信用度を示した指標のことです。ソフトバンクグループはこの格下げに反発し、格付けを取り下げています。  さらに、最近のニュースで、ソフトバンクが1兆3500円の赤字というニュースを耳にした人も多いはずです。 「1兆なんて桃鉄を50年以上プレイしない限り聞いたことない額」「もはや国家予算規模では?」といった声がSNSでは聞こえてきます。  一体、いまソフトバンクグループに何が起きているのでしょうか? ソフトバンクとはどんな会社なのでしょうか?  上戸彩さんとお父さんだけじゃない、“予想外”な企業としてのソフトバンクの“変人ぶり”を私、馬渕磨理子がお届けします。  まず、話の前提として、ソフトバンクはテレビCMでスマホの回線会社のイメージがありますが、実態は未来の大企業を目指すベンチャー企業に出資をする「投資会社」と捉えるのが正しい理解です。これを踏まえて、分析スタートです。  キーワードは「株主価値」と「郡戦略」です。

変わった会社ソフトバンクを知るキーワード1「株主価値」

 まずは同社の直近の決算発表を孫正義会長兼社長(以下、孫社長)の言葉とともに振り返っておきましょう。2019年7-9月期の決算は、7000億円の営業赤字となりました。  決算発表で、孫社長は“反省”という言葉を何度も繰り返し、決算発表の内容は「真っ赤っかの大赤字」「これだけの赤字を出したのは創業以来ではないか」と口にしました。  が、その一方で「大勢に全く異常なし、嵐ではなく、平穏無事な、さざ波と笑っています」とも述べています。なぜこんなことが言えるのでしょうか。それは、同社が独自の“株主価値”という考え方に基づいていてビジネスをしているからです。  この発表から約半年後。孫社長は、2019年10-12月期の決算発表で「今回の決算、一言で表するとすれば、『潮目が変わった』決算です」と述べました。その理由は「黒字回復基調になり、株主価値が5兆円増えた」から。  株主価値――またこのワードが出てきました。どうやら、“株主価値”を理解することがソフトバンクグループを知るポイントになりそうです。

“営業利益”ではなく“株主価値”を見てほしいワケ

 これから、ソフトバンクの言う株主価値について説明します。今や、ソフトバンクグループは世界中の企業の株式を持っています。  ソフトバンク・ヴィジョン・ファンド(略してSVF)、アーム(※1)スプリント(※2)、ソフトバンク、アリババ(※3)など、ソフトバンクグループの保有株式価値は合計31兆円です(2020年2月12日時点)。 ※1…イギリスの半導体の会社 ※2…アメリカ第4位の通信キャリア会社 ※3…中国の大手EC企業  先に結論を言うと、株主価値とは、保有株式から借入を引いた額のことを指します。 【ポイント】 株主価値=保有株式―借入  これがどのぐらい増えたのか減ったのかということに重点を置くべきたと孫社長は述べているのです。もともと、ソフトバンクグループは、モバイル企業から投資会社へと変貌を遂げた企業です。そのため、実態としての経営成績は「営業利益」ではなく「株主価値」として見たほうが妥当だという判断なのです。  なぜでしょうか。モバイル企業が営業利益を指標にすべき理由は、モバイル通信料や端末販売などの実績としてカウントできるものが営業利益だから。対して、投資会社は、投資先の保有株式の評価から借入を差し引いた含み益・含み損での評価をするべきという理由で、株主価値を見たほうが企業の経営成績を正確に判断できるというわけです。  孫社長が「営業利益ではなく株主価値を見てほしい!」と言った意味が少し理解できたのではないでしょうか。

「儲かってるのか?」のカウントの仕方がちょっと変わってる

 ここまで、ざっと株主価値について説明してきました。さらに、ソフトバンクグループが営業利益で自社の業績を判断してほしくない理由を説明しましょう。  端的に言えば、営業利益のカウントの仕方はソフトバンクにとって“微妙”なのです。  たとえば、あなたが高校野球の強い野球部に推薦入学で進学したいとき、キック力やジャンプ力、はたまた泳ぐのが上手いかだけで評価されるとしたら、ちょっと微妙な気分になりませんか? むしろ肩の強さやコントロール力、バッティング力を見てほしいと思うはず。それと同じです。  ソフトバンクグループの営業利益は、カウントの仕方が特殊なのです。  現在、同社はUberとアリババの株式を持っています。Uberの営業利益はソフトバンクグループの営業利益として100%カウントしているのに対し、アリババはなんと0%。  例えば、Uberの株が1000億上がった場合、これは100%ソフトバンクグループの営業利益としてカウントされます。一方、アリババの場合、同じことが起きてもソフトバンクグループの営業利益には1円もカウントされません。  いったい、なぜか? これは、会計上の問題です。  ソフトバンクグループが持つUber、WeWork、Slack、Guardant Health(※4)などは、正確に言えば投資会社であるソフトバンク・ビジョン・ファンド(略してSVF)が持っています。SVFはオペレーティングカンパニー(※5)です。 ※4…アメリカ・カルフォルニア州に本社を置くがん早期発見を検出する技術を持つベンチャー企業 ※5…グループで複数の会社を持っている場合、株式を持っているだけの企業がホールディングスカンパニー。対して、営業活動を実際に行う会社がオペレーティングカンパニー。  SVFは、投資が主な企業活動です。そのため、Uberの株価が上がったことは営業利益にカウントされるのです。  パン屋さんはパンがたくさん売れたら営業利益が増えたとカウントします。これと同じく、SVFは“投資屋さん”なので、株を買って、株価があがったら営業利益にカウントするのです。本業活動が儲かっていると見なせるからですね。  しかし、アリババの株はSVFが買っているわけではありません。ソフトバンクグループが直接、または持株会社を通じて持っているものです。そのため、アリババの株はいくら上がっても営業利益にはカウントしないのです。  そこで「株主価値を見たほうが会社としての業績を正確に理解できるでしょ?」と孫社長は述べているのです。ちょっと変わった会社ですよね。
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