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黒川氏のマージャン賭博、スジ論ならば監督責任で内閣総辞職だ/倉山満

法に携わるものならば一目瞭然。定年延長の首謀者は首相官邸だ。監督責任は安倍内閣にこそある

 公務員法は一般法、検察庁法は特別法。法学部一年生の基礎だが、特別法は一般法に優先する。この場合は、一般的に国家公務員の定年は延長できるが、検察官に関しては特別に法律があって定年を延長できない。  それを「検事も公務員だから、一般法は特別法に優先する」と森法相は言わされた。こんな恥ずかしい理論、司法試験を優秀な成績で受かった検事の集まりである法務検察は、死んでも言えるはずがない。森法相とて弁護士なので、自分が法理論として成り立たない答弁をしているとわかっている。法務検察から、「政府の解釈を変更してでも黒川の定年を延長してくれ」などとは言うはずがないのだ。首謀者は首相官邸だ。  しかも法務省は、検察庁法の改正を検討していた。つまり、解釈の変更では許されないから、法律そのものの変更を検討していたのだ。法に携わるものならば、安倍内閣の無理押しは一目瞭然だ。  法務検察主導で黒川後継にしたいならば、稲田氏が定年を前に総長を譲ればいい。そもそも法務検察は、検事総長が「国際会議に出たい」「ゴーン事件の責任をとったと思われたくない」など、わがままを言って許される組織ではない。人事は官僚の命、総長と雖いえども個人の横暴は通せないのが掟だ。法務検察本流は、官邸の介入で黒川氏が跳梁跋扈するのを苦々しく思っていたのに、このストーリーでは、あべこべだ。  検察には「検察官一体の原則」があり、「その検事でなければ捜査できない事件」がないように、重要事件では総長から現場の担当検事まで情報を共有している。しかも黒川氏でなければゴーン事件の捜査はできないといいながら、何ら進展はない。  IR事件に至っては、黒川氏の定年延長が決まった直後に、捜査が終結した。ただでさえ黒川氏は「安倍内閣が疑獄をもみ消すために重用した人物」と目されているのだ。どこが、余人を持って代えがたい人物なのか。  ここまで書いて、大事件が飛び込んできた。  国民が緊急事態宣言で自粛を強要されている中、黒川氏は2度も手下の新聞記者とのマージャン賭博をしていたのが暴露された。当然、辞表の提出を余儀なくされた。  ところが、安倍首相は稲田総長に「監督責任をとれ」と辞任を迫ってきた。血迷ったか!?  しかし、追い詰められている以上、血迷ってでも勝負手を放ち、検察の錯誤を強いるしかないのだろう。  スジ論ならば、監督責任で内閣総辞職だ。日本のために言う。  稲田、頑張れ!
1973年、香川県生まれ。救国シンクタンク理事長兼所長。中央大学文学部史学科を卒業後、同大学院博士前期課程修了。在学中から’15年まで、国士舘大学日本政教研究所非常勤職員を務める。現在は、「倉山塾」塾長、ネット放送局「チャンネルくらら」などを主宰。著書に『13歳からの「くにまもり」』など多数。ベストセラー「嘘だらけシリーズ」の最新作『嘘だらけの日本古代史』(扶桑社新書)が発売中

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