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安倍首相と小池都知事には自粛を一日でも長く続けたい、明確な理由がある/倉山満

安倍首相と小池都知事には、緊急事態宣言を一日でも長く続けたい、明確な理由がある

 申し訳ないが、安倍首相と小池都知事が国民のことを考えて政治を行っているとは、カケラも思っていない。二人には、緊急事態宣言を一日でも長く続けたい、明確な理由があるからだ。  小池都知事の動機は、簡単だ。都知事選挙ギリギリまで自粛を続けさせ、7月の都知事選挙に向けて対立候補の活動を制約したいからだ。  そもそも、この御仁はオリンピックの延期が決まるまでは姿を隠していたくせに、自分に責任が問われないとわかるやメディアにしゃしゃり出てきた。言わずもがなの「ロックダウン」を口走り、東京都を大混乱に陥れた。その上で、都独自の補償金を打ち出し、人気取りにだけは余念がない。人は殺されそうになった時に命綱を差し出されると感謝する生き物だ。たとえ、自分を殺そうとした相手でも。小池都知事のやり口は、袋叩きにして有り金全部を巻き上げて、帰りの電車賃だけを投げ与えて恩に着せる。ヤクザの手口だ。  安倍首相は、コロナ禍が大騒動になる直前から支持率が低下、検察人事に介入して批判にさらされていた。それが「コロナ休戦」によって、九死に一生を得ていた。それを、何を血迷ったか、検察庁法を持ち出し、自分の首を絞めたのだから、錯乱している。ただ、権力の座にしがみ付きたい意志だけはありありだ。支持率が激下がりの所で、予定より1週間早く、延長された緊急事態宣言を完全解除した。  しかし、何の法的根拠もなく「新しい生活様式」を打ち出し、国民の自粛を続けさせようとしている。「夏でもマスクをしろ」だの、「食事の時におしゃべりをするな」だの、舐めてるのか?  この過程で、利用されるだけだったのが、医師による科学的知見だ。  西浦博北海道大学教授は、「何もしないと42万人死ぬ」「8割の接触減を」と打ち出した。西浦教授は、科学的根拠に裏付けられた己の信念に基づいた主張のつもりだったのだろう。だが、見事に日本政府に利用されただけだ。  そもそも、「42万人」も「8割」も、仮説に基づいた実験にすぎない。最新の状況に応じて修正していくのが、科学者の良心だ。では、今の日本政府で科学者の良心が通る環境がどこにあったか。  軍人が敵首都攻略を求めるように、医者は病気の撲滅を欲する。専門家が専門的な面に限定して意見を述べよと言われたら、そう答えるに決まっている。だが、それをやろうとしたら不利益が生じる場合、止めるのが政治家の見識だ。見識を裏付けるのは、教養と胆力だ。  西浦氏がマッドサイエンティストと評されるのは不当な面はある。だが、邪悪な無教養人相手に、危険な心理を吐いた罪は免れまい。
1973年、香川県生まれ。救国シンクタンク理事長兼所長。中央大学文学部史学科を卒業後、同大学院博士前期課程修了。在学中から’15年まで、国士舘大学日本政教研究所非常勤職員を務める。現在は、「倉山塾」塾長、ネット放送局「チャンネルくらら」などを主宰。著書に『13歳からの「くにまもり」』など多数。ベストセラー「嘘だらけシリーズ」の最新作『嘘だらけの日本古代史』(扶桑社新書)が発売中

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