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安倍首相と小池都知事には自粛を一日でも長く続けたい、明確な理由がある/倉山満

緊急事態宣言の解除に、科学的知見など全く無い。世論の反発が怖かったのだ

言論ストロングスタイル

SNSでは「さよなら安倍首相」のハッシュタグが登場しているが、さよならすべきは首相に限った話ではない。そして、さよならどころの状況でもなくなっているのだ 写真/時事通信社

 4月6日に発令され、全国に及ぼされた緊急事態宣言が、予定より1週間早く5月25日に全面的に解除された。本当に緊急事態宣言が必要だったかどうかは、今後の検証が必要だろう。仮に必要だったとして、これほどの長期にわたるべきであったかも、議論の余地がある。  ただし、断言できることがある。日本政府には、科学的知見を顧みる気が無かった。この場合の日本政府とは、安倍首相を総裁とする自民党の中枢であり、そして官僚機構の一部安倍側近である。この一握りの権力者は、ただただ自分の都合で緊急事態宣言を発令し、全国に及ぼし、延長し、一部解除し、そして全面的に解除した。ただ、それだけだ。  普通の日本人は、医者の専門的な意見に基づき、政府がコロナ退治のために緊急事態宣言を行っていると信じて疑わないだろう。だから、何の法的権限も無い営業外出を自粛する要請に応じ、補償金が届かなくても我慢する。そして合言葉が「誰も悪くない」だ。どこまでお人よしなのか。  今の政府が日本国民を殺しに来るはずがないと信じたい人は、殺されてでも信じていた方がいい。  では、政府はどのような方針に基づいて緊急事態宣言を発令し、どのような基準に達したら解除するつもりだったのか。誰も答えられない。  それどころか、延長直前にも、解除の基準が想定されず、「これから検討する」と答える始末だった。最初から延長する気満々だったということだ。つまり、緊急事態宣言によって、国民の自由を奪い、政府による統制を強めること自体が目的だったという証拠だ。  見るに見かねた、吉村洋文大阪府知事は、独自の基準を設定、発表するに至った。慌てた日本政府や小池百合子東京都知事も追随する。世論の反発が怖いからだ。  どの数字を見ても、なぜこれほどまでに緊急事態宣言を続けなければならないのか、何の証明もしなかった。情報公開が不十分で、発表される数字は矛盾だらけだった。しかも無責任である。  特に悲惨だったのが、女優の岡江久美子さんだ。63歳と高齢で、過去に大病を患い、疾患があった岡江さんは十二分に気を付けていたとか。マスコミの報道には注意し、「37.5度以上の発熱が4日以上続いた場合に、病院に行ってください」との政府の呼びかけを、律儀に守った。結果、新型コロナウィルスの感染発覚が遅れ、帰らぬ人となった。  これに加藤勝信厚労大臣は「あくまで目安で絶対の基準ではないとの通達を出していた」と国会で悪びれずに答えた。まるで誤解した国民が悪いとでも言わんばかりだ。  確かに、病院に患者が殺到して医療崩壊を防がねばならないとの一面はあった。だが、「37.5度以上の発熱が4日以上続いた場合に、病院に行ってください」との政府の呼びかけは、日本中の誰もが知っている。それでいながら、政府の無責任な態度だ。  また、経済面では地獄絵図だ。政府の補償は少なすぎるし、遅すぎる。ただでさえデフレ不況脱却前の消費増税で経済は劇的に悪化しているところへ、コロナ禍だ。先日も、経済苦でトンカツ屋さんがトンカツ油で焼身自殺をはかるという痛ましい事件が起きた。経済苦の本番は、これからなのに……。  さて、これでも「今の政府の言いなりになれば、日本国民は殺される」と言っても、信じてもらえないだろうか。少なくとも私は、自存自衛のために、自分の頭で判断し、政府を徹底的に警戒し、殺されないように生きていく。
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安倍首相と小池都知事には、緊急事態宣言を続けたい、明確な理由がある
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1973年、香川県生まれ。救国シンクタンク理事長兼所長。中央大学文学部史学科を卒業後、同大学院博士前期課程修了。在学中から’15年まで、国士舘大学日本政教研究所非常勤職員を務める。現在は、「倉山塾」塾長、ネット放送局「チャンネルくらら」などを主宰。著書に『13歳からの「くにまもり」』など多数。ベストセラー「嘘だらけシリーズ」の最新作『嘘だらけの日本古代史』(扶桑社新書)が発売中

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