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秘伝のレシピを燃やして生まれた定番バーボンの秘密とこだわり

父からのアドバイスは一言「Don’t screw up the whisky.」

 1953年に蒸留所の改修が終わり、1954年2月に最初の蒸留と樽詰めが行われました。このときは19樽が生産されたそうです。1958年、ビルの妻であるマージョリーは「メーカーズマーク」というブランド名や封蝋のアイディアを思いつきます。トレードマークの星と「S」「Ⅳ」は、農場の名前とサミュエルズ家のSとビルが4代目という意味で付けられました。前述のとおりビルは6代目で、マークが作られた数年後に息子のビル・ジュニアが気がつくのですが、今でもそのまま使われています。
メーカーズマーク

メーカーズマークのトレードマークです。テーラー・ウィリアム・サミュエルズからカウントしているので4代目になっています

 そこから5年、6回の夏を越え、メーカーズマークが生まれました。1975年、ビル・サミュエルズ・シニアからビル・ジュニアに引き継ぎます。この時のアドバイスは「Don’t screw up the whisky.(ウイスキーを台なしにするな)」の一言だけだったそうです。  2011年、ビル・ジュニアが引退して、息子のロブ・サミュエルズが8代目となっています。さらっと書きましたが、初代が1780年に作り始めてから240年が経ち、8代目になったのです。実際に蒸留所に行ったことがあるのですが、その歴史を感じることができました。

メーカーズマークの封蝋は今でも手作業

 その際は、メーカーズマークのマスターディスティラーであるグレッグ・デイビスさんに蒸留所の隅々まで紹介してもらいました。マスターディスティラーとは、ウイスキーの味を決めるブレンダーのトップポジッションといったところ。  メーカーズマーク蒸留所にはとにかく働いている人が多かったです。「機械まかせにせず、できる限り人の手でつくる」との信念を守っているためだそうです。最近の大型蒸留所は機械化が進んでいるので、メーカーズマーク蒸留所は温かい感じを受けました。
メーカーズマーク

マスターディスティラーのグレッグ・デイビスさんに蒸留所のツアーをしてもらいました

 メーカーズマークの封蝋は人の手で融けた蝋の中にウイスキーの瓶を入れて付けています。実際に工場の中に入ったことがあるのですが、お姉様達がものすごいスピードで付けていました。ほとんどミスなく、数本の垂れが出て機械のようでした。とは言え、もしミスが発生して付けすぎたり垂れすぎたりしてもそのまま出荷するとのことでした。我々呑兵衛からすれば、そのミスの1本は当たりかもしれません(笑)。
メーカーズマーク

メーカーズマークの封蝋を行っているところ

 メーカーズマークはストレートでも最高に美味しいバーボンですが、ロックでもハイボールでもマッチします。メーカーズマーク蒸留所近くのレストランで食事をしたときには、メーカーズマークのミントジュレップが出てきて、とても美味しかったです。カップにミントと砂糖を入れてよく混ぜ、メーカーズマークを30ml注いでクラッシュアイスを入れて完成。夏に最高のカクテルです。  メーカーズマークには通常モデルのほかに、「メーカーズマーク 46」という製品もあります。熟成させる樽の中に、焦がしたフレンチオークの板を入れて、より原酒が木材と触れる面積を増やしたものです。ウッディな味わいが魅力のワンランク上のメーカーズマークです。
メーカーズマーク

「メーカーズマーク 46」の樽を分解したところです。インナースティーブが見えます

 メーカーズマークはほとんどのバーで扱っていると思います。今日のバーで赤い封蝋を見かけたら、メーカーズマークを頼んでみてはいかがでしょうか。
お酒を毎晩飲むため、20年前にIT・ビジネスライターとしてデビュー。酒好きが高じて、2011年に原価BARをオープン。2021年3月には、原価BAR三田本店をオープンした。新型コロナウイルス影響を補填すべく、原価BARオンライン「リカーライブラリー」をスタート。YouTubeチャンネルも開設し生き残りに挑んでいる
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