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『TENET テネット』ノーラン監督が語る「これはタイムトラベル映画じゃない。スパイ映画だ」

アイデアの構築は「図形で考える」

 監督自身も間違えるほど複雑な構造を持つ本作。そのアイデアの構築は「物語を作るときに、図形で考える」ことが功を奏しているのだとか。 「いつもそうなんだけど、物語を組み立てるときは、時間のベクトルがどのように重なっているのか、図形で考えることが多いんだ。今回の場合は、『インセプション』で映像化したペンローズの階段や、エッシャーのリトグラフが視覚的に影響を与えてくれた。  また、『メメント』では銃に逆行する弾を映像にしたけど、あれはメタファーとして描いた。それが現実に起こりうるとしたら、と思いついたとき、この作品の軸が決まったんだよ。そうして脚本が完成した後、物理学者のキップ・ソーンに読んでもらい、時間や物体の動きにアドバイスをもらって、根拠のある物理学の法則に基づいた物語にしたんだ。  もちろん科学的に正しい、と主張するつもりはないけど、実際の科学にゆるく基づいて作られているよ」

ノーラン作品の魅力は…

 まったくの架空の世界観や物語にするのではなく、現実とリンクさせる。これこそノーラン作品の魅力。現実世界のちょっとしたことをねじ曲げるだけで、100%架空の話には見えなくなる。それがSFともファンタジーともつかない映画体験となることを理解したうえで作品を紡ぎ上げているのだ。 「今回は、映画の中の世界で適用されているルールが複雑だったため、新しいIMAXカメラやレンズの開発、車両の改造、キャストやスタントマンの順行と逆行の動きのトレーニングなど、準備することが山のようにあった。だけど、長年の経験で学んだことが役に立ったよ。一画面ごとに用いる技を変え続けることで、観客が飽きにくくなるんだ。その結果、没頭できる映画ができあがったんだ」  難解だがクセになる圧倒的映像スペクタクル作品だ。 TENET テネット ’20年/アメリカ/2時間30分 監督/クリストファー・ノーラン 出演/ジョン・デヴィッド・ワシントンほか 配給/ワーナー・ブラザース映画 全国公開中
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ノーラン監督のお家芸!“時を操る”難解作品3選
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