更新日:2020年11月19日 10:57
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紙の広告はオワコンなのか?朝日新聞の広告をバズらせた舞台裏を聞く

朝日新聞社内でネガティブな反応はなかった

――マンガの中で新聞広告に否定的な意見が出るシーンがありましたが、社内で批判はなかったのでしょうか。 田浦:「新聞広告はお高いのよ」「15段で4000万!」みたいなところですね。料金表も公開しているので、問題なかったです。  一方で新聞の本質的な価値――老若男女に届く、本気のテーマを発信していることも、しっかりマンガに盛り込んでもらったので、社内でもネガティブな反応はありませんでした。むしろ「ありがたい」みたいな。もともとマンガを使う企画自体にも異論がなかったですね。 左ききのエレンコマ

ネット世代から見た新聞の“シズル感”とは?

五十嵐:新聞の見開き30段で、どーんとマンガが載るって、けっこうなインパクトですよね。新聞でしかこの迫力は出せないと思うんです。業界では「シズル感」とかいったりしますが。これがネット上のマンガだと、見え方が普通になってしまう。 ――「朝日新聞×左ききのエレン」で、ツイッター投票で選ばれて掲載された広告は、目黒広告社が作ったもの。白黒ストライプの後ろに薄いグレーで文字を書くと、近視で視界がぼやけている人の方がよく見えるというものでした。
目黒広告社の広告

ツイッター投票で勝って掲載された目黒広告社の広告。実際には文字が見える

田浦:新聞の印刷も4色(シアン、マゼンダ、イエロー、ブラック)なんですが、グレーの文字に黒を入れると見えちゃうので、シアンとマゼンダをうまく組み合わせて、ふわっと見せるように、インクの量を調整して目視しました。 五十嵐:実際に工場に行って、「これだと見えすぎる」などと言って2度ほど印刷の調整をしましたよね。実際に広告が15段で出るので、クオリティの低いものは絶対出せません。 「左ききのエレン」ファンの支持があるので、ツイッター投票は目黒広告社が勝つだろうと予測はしていましたが、どちらの案が掲載になっても困らないように、GOチームのアイデアも手を抜けませんでした。 ――最初からクライアントはJINSに決まっていたのですか? 五十嵐:いえ、企画が決まってからお声がけしました。もともとおつきあいがあったので、社長に直接お話しできて、即決でした。商品の説明をしながら企業姿勢がわかる広告なので、意志決定のある方に話した方が早いという目論見がありました。  この広告が出たあと、JINSさんからフィードバックをいただいたのですが、就活の面接で、「あの広告を見ました」という声がすごく多かったそうです。やはり新聞紙面とデジタルの掛け合わせならではだなと思いました。  まずcakesという「左ききのエレン」を連載しているWEBサイトでマンガを出し、「明日、最終話が新聞に載る」と告知したんですね。ファンの間で話題になり、新聞をコンビニに買いに行くというかたも多かったようです。  新聞広告って1回出すのにすごくお金がかかるので、「出して終了」が多いんですけど、今回の「左ききのエレン」のように1カ月間ずっとプロジェクトが続くのは新しい。だからすごく反響が大きかったと思います。
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今、広告は嫌われているけれど…
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ライター・編集、少女マンガ研究家。スタッフ全員が何らかの障害を持つ会社「合同会社ブラインドライターズ」代表。著書に著名人の戦争体験をまとめた『わたしたちもみんな子どもだった 戦争が日常だった私たちの体験記』(ハツガサ)などがある

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