仕事

移住農家を始めた30代男性、農業収入ゼロでも「手放したくない暮らし」

 新型コロナの感染拡大、自粛、ソーシャルディスタンス。大きな生活の変化に収入が激減しながらも、前を見て生きる人々を直撃! 今回は地方移住で農業を始めた30代男性、給与明細とともに今の心境を語る。
[稼げない人]の給与明細

澤田晃宏さん(39歳)

地方移住で就農するもいまだ農業収入はゼロ……

 新型コロナの流行による「3密」回避志向は、多くの都市生活者にとって、低密度でオープンエアな地方暮らしに目を向ける契機になった。この大きな流れのなかで、都市から離れて田舎で農業を始めるライフスタイルへの関心も高まっている。2020年6月に東京を離れて淡路島に移住したフリー記者の澤田晃宏さん(39歳)に実情を聞いてみた。 「今は就農しながら別の仕事をする『半農半X』を目指しています。1haの農地を借り、神戸の焼き肉店需要を見越したニンニクを植えて、畝の間には相性のいいイチゴを混植。収穫まで農業収入は立たないので、原稿執筆のほかに漁師のアルバイトや土木作業など、なんでもしてます」  日本の農家のうち7割弱が兼業であることを考えれば、彼も立派な農家のはしくれ。農林水産省の統計では、就農10年以内の新規就農者の農業所得の平均は109万円。農業機械や施設への初期投資をはじめ、種苗、肥料、燃料などにかかる費用を合わせれば、就農1年目に平均569万円がかかる。 「まともに払ってたら負けですよね。ただ、初期投資以前に、そもそも新参者には誰も農地を貸してくれない。だから移住してまっ先に草刈りなどの何でも屋を開いて近所中にチラシをまいて、格安で仕事をしました。  さらに夜は地元のスナックを飲み歩いて、地域の人と人間関係を築いたんです。そこで仲良くなった人から農地やトラクターを借り、スナックのママが持っている家の片付けを手伝う代わりに住まわせてもらったり」

お金はないけど手放したくない暮らし

 本来なら就農に700万円ほどかかるところを、80万円で済ませたというから苦労が忍ばれる。 「トンビが鳴く声で目が覚めて、仕事で汗を流して、大阪湾で釣った旬の魚や地元でもらった新鮮な食材を食べる……お金はないけど手放したくない暮らしですよ」  多くの新規就農者が死屍累々のなか、彼は貨幣経済の縛りから脱して、幸せの王国を造らんとしているようだった。
[稼げない人]の給与明細

積極的に農家の草を刈る、その他の日は地元漁師に頼んでアルバイト。人間関係の構築に忙殺される毎日だとか

<給与明細> 実働25日 ・農業収入 0円 ・漁師ほかの雑収入 20万円 ※移住農家の平均月収9万円(編集部調べ) ▼澤田晃宏さん(39歳) 神戸市生まれ。建設現場作業員、出版社の編集者や記者などを経てフリーに。著書に『ルポ技能実習生』などがある <取材・文/真島加代(清談社)>
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