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給与ゼロ「無給医」という闇。アルバイトで退職金も厚生年金もない

[稼げない人]の給与明細

※写真はイメージです

医者なのに底辺なのか? 給与ゼロ「無給医」という闇

 人の健康と命を守る医師の姿は、テレビドラマでは華々しく描かれ、知的な高給取りと思われがちだが、それは表向き。大学病院に勤務する医師の多くは、大学から賃金をもらわずに働きながら、市中病院でアルバイトをして生計を立てている「無給医」なのだ。  都内の大学病院に勤めるまいまいさんは、平日は大学病院で研究や外来診療などにあたりながら、空いた時間と週末に複数のクリニックで当直や診療をかけもちしている。大学病院での一日の拘束時間は8~22時の計14時間、休日は週に1日あればいいほうだ。 「私が大学院生だった頃は、大学病院から支払われる月の給料は約10万円ほど。2020年2月に文科省は全国の大学病院で2819人の医師が無給で働いていると発表しましたが、本来もらうべき給料がもらえていない点では、私も広義では『無給医』。特に厄介なのは子持ちの大学院生で、認可保育園に子供を入れられないんです。本当は平日フルタイムで働いていても、『無給』ゆえ勤務証明が出ない。月給10万円を時給換算したら書類上は週2日ほどの勤務になる。自宅保育が妥当と判断されるんです」

退職金も厚生年金もない不安定な身分で医療従事

 そして現在のまいまいさんは、本来の意味での無給医だ。 「大学病院は予算の制約上、人件費が潤沢でなく、有償で働ける医師の数が限られています。だから今の私のように、大学院生でもなく、准教授や教授といった役職のない医師には給料が出せません。しかし人手は足りない現実がありますから、大学病院側としては無給医という存在をなくした上で働かせたい。そこで、アルバイト先のクリニックに所属し、そこから大学病院に派遣されているという形で私は働いています」  クリニックでのアルバイト収入は40万円程だが退職金も厚生年金もない不安定な身分。緊急時の対応のために大学病院の近くに住まなければならず、住居費は高くつく。しかも万が一の訴訟リスクに備えた、月々の医療賠償保険を自腹で払っているという。  それでも彼ら無給医が大学病院での勤務にこだわるのはなぜか。 「専門医の資格取得に大学病院での勤務経験が必須になったことがまず挙げられます。いずれ他のクリニックで働くにしても、若いうちは大学病院に勤務して経験と肩書を得るべきという考えがこの世界には根強くあるんです」  ただ、30代も後半に差しかかれば、大学病院に残る者、市中病院に就職する者、開業する者と、キャリア選択を否応なしに迫られる。 「大学のポストは限られているので、研究で成果が出せずに大学病院をやめていく人は多いです。実家が病院経営だったり、夫も妻も医師の共働きのような、お金に余裕のある人ほど選択肢は多いんですが、私はそうではないので……」  上には上なりの悩みがあるのだ。 【無給医・まいまいさん】 大学病院の内科病棟に勤務する無給医。Twitter(@fuwamochipeta)上では肛門異物症例や性交時のペニス角度などの下ネタも発信 <取材・文/松嶋千春(清談社)> 様々なメディア媒体で活躍する編集プロダクション「清談社」所属の編集・ライター。商品検証企画から潜入取材まで幅広く手がける。
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