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「アイドルとの握手なんて自分から拒否する」ハロヲタの武士道とは

ピストル

ピストル「他のヲタとの比較は地獄の一丁目」

保田圭の魅力を発見したヲタたち

劔:僕もバンドじゃないもん!MAXX NAKAYOSHIの事務所で仕事をしていたから、若いアイドルファンの生態を見る機会もあったんですね。そうするとやっぱりTO(※トップオタク。ファンヒエラルキーの頂点にいる人物)になろうと躍起になっている層が一定数いるんですよ。「誰がヲタ芸口上を最初に言い出すか?」みたいなところで、ライブという名の“祭り”を仕切りたがっている。 明大:結局、それはメンバーに認知されたいからですよね? それは当時のハロプロにはなかった文化だなぁ。 劔:ハロプロファンの特徴として僕が感じるのは、いろんな価値観を認める傾向があるなということ。「アイドルなんだから可愛ければOK」という感じでは決してないんですよね。逆にいうと、顔が可愛くても何かしら光るものがないと人気メンバーになれないという部分もある。  これは20年前から一貫していることで、あややの隣に既婚者もいる太陽&シスコムーンや演歌の前田有紀が共存するダイバーシティ感はすごいなと感じていました。若い女性ファンが増えているのを見ると、こういう多様性が今の時代にマッチするようになったのかなと思います。 明大:失礼かもだけど、保田圭ちゃんなんて典型的な美少女というわけでは決してなかったですからね。だけど、間違いなくファンから愛される人気メンバーだった。もちろんそれは圭ちゃんの歌唱力という武器があってこその話なんだけど。今だったらモーニング娘。’21の小田さくらちゃんも女性を中心としてものすごく人気が高いけど、ステージでの様子を知らない外部のアイドルファンからしたら「なんで?」ということにもなりかねないと思うんです。 ピストル:顔だけじゃなくて、ステージでの説得力だったりストーリー性に惹かれているわけですからね。特に『LOVEマシーン』以降ファンになった人たちは、それまでのアイドル好きにない属性だったと思いますよ。今だったら、たとえば乃木坂46のファンからはそういった傾向をあまり感じないんですよね。 劔:つんく♂さん自身、“可愛い”の定義が広い方じゃないですか。いろんな可愛さがあってしかるべきだという価値観なので。
劔樹人

劔樹人「多様性を愛するのがハロヲタの特徴」

ハロプロ顔とは?

──ただ、“ハロプロ顔”というのもよく他のアイドルファンから指摘されますよね。ハロプロだからこそウケる顔というか。 ピストル:逆に地下アイドルとかで可愛いとされるタイプって、わりと類型的なんですよ。カラコン入れて、派手につけまつげしてっていう感じで。それが今のアイドルのトレンドだとしたら、そこからは明らかに逸脱しているのかもしれない。マクドナルドのCMで話題になっているかみこ(上國料萌衣/アンジュルム)が入ったときは「おっ、珍しく今どきの子が来たな」って驚いたんですけどね。 明大:今はハロプロ顔じゃないメンバーも確実に増えていますよ。そういう意味でもハロプロは大きく変わったんだなと痛感しています。 +++++ 劔樹人◎松浦亜弥のMVを観たことで人生が一変。「神聖かまってちゃん」等のマネージャーを経て、「あらかじめ決められた恋人たちへ」や、「和田彩花」のベーシストとして活躍する。ほかに漫画家の顔も持ち、近著に『敗者復活のうた。』(双葉社)。 ピストル◎モーニング娘。黎明期から「娘。楽宴」「亜依国精神」といったファンサイトを運営(のちに日記サイト「なれのはて」も開設)。守備範囲はハロプロのみならずアイドルカルチャー全般に及び、その鋭い批評眼は大きな注目を集め続けている。 明大店長◎辻希美原理主義者。テキストサイト運営や度重なる遠征など度を越したヲタ活動が相手女性にバレ、結納直前に婚約破棄された過去を持つ。映画『あの頃。』で登場する劔と仲間たちの集団「ハロプロあべの支部」とは昵懇の間柄だった。
あの頃

(C)2020『あの頃。』製作委員会

『あの頃。』 2021年2月19日(金)より、TOHOシネマズ 日比谷ほか 全国ロードショー 配給:ファントム・フィルム (C)2020『あの頃。』製作委員会
出版社勤務を経て、フリーのライター/編集者に。エンタメ誌、週刊誌、女性誌、各種Web媒体などで執筆をおこなう。芸能を中心に、貧困や社会問題などの取材も得意としている。著書に『韓流エンタメ日本侵攻戦略』(扶桑社新書)、『アイドルに捧げた青春 アップアップガールズ(仮)の真実』(竹書房)。
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