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矢口、ミキティ、加護ちゃん。ハロヲタはメンバーの離脱とどう向き合ってきたのか

 2月19日から公開された映画『あの頃。』が大きな話題を呼んでいる。作品のテーマは「アイドル」ではなく「アイドルヲタク」。ハロー!プロジェクトのファン(ハロヲタ)がまだ「モーヲタ」と呼ばれていた2000年代初頭、推しの応援に青春を捧げた若者たちの青春群像劇となっているのだ。  3部作の後編となる今回は、長くヲタク活動を続けていることで得たものや感じたことをベテランならではの視点で振り返る。原作本『あの頃。男子かしまし物語』(イーストプレス)著者であり、映画では松坂桃李演じる主人公のモデルになった劔樹人氏を中心に、昔からの劔のヲタ仲間である明大店長氏、アイドルヲタク界に強い影響力を持つピストル氏を交えて激論が交わされた。これぞモーヲタ頂上座談会だ!
モーヲタ座談会

(写真左から、敬称略)明大店長、劔樹人、ピストル

仲間とのアイドル談義は青春だった

──映画『あの頃。』で描かれている時代から20年近く経ちましたが、当時のヲタがそこまで熱狂的だったのは結局なぜだったんでしょうか? 明大:純粋にハロプロが面白かったというのもあるけど、やっぱり一番は現場で知り合った仲間たちといることが楽しかったんですよ。それは否定しようがない事実だと思う。『あの頃。』は劒さんと仲間たちの青春を描いた作品だけど、アイドルを長年応援している人なら誰でも“あの頃”は持っているんじゃないですかね。 劔:そう言っていただけると、非常にうれしいですね。 明大:ヲタク仲間って特殊なんです。普通は大人になると会社と家の往復になって、交友関係も限られてくる傾向があるじゃないですか。だけどアイドル現場では職業も年齢も居住地もバラバラな人たちが、一緒になって好きなアイドルについて熱く語っている。まさに青春なんですよ。 ピストル:青春というのは、その通りだと僕も思う。本当に学生時代の部活の延長なんです。たかがヲタの戯言と言われればそれまでなんだけど、好きなアイドルのことでああだこうだと激論を交わす時間がどうしようもなく楽しかった。年齢もバラバラだから、一回り下のヲタから「おい、ピストル!」とか乱暴に扱われることもしょっちゅうでしたけども(笑)。

ヲタの高齢化問題

──最近のハロプロ現場は若い女性が飛躍的に増えていて、男女比が半々ということもザラですよね。その一方で、20年以上追いかけている初老の紳士たちも増えている印象があります。 ピストル:冗談抜きの話、これからのハロプロは老人ホームを慰問したほうがいいと思いますよ。もちろん人によっては60歳や70歳を超えても現場に通い続けることはあるでしょう。だけど体力的に難しいという面もあるはずだから、そういう人たちの受け皿は作ってあげたほうがいいんじゃないかな。老人ホームにやってきた若手メンバーを見ながら「あの頃のなっち(安倍なつみ)に似ているねぇ」なんて目を細める光景、素敵だなと思いますけどね。 劔:ここからのハロプロファンはフェースが変わっていくはずです。昔は若い男性が夢中になっていた。近年になって若い女性ファンが急増するようになった。つまり今後はおじいさんファンが増えると同時に、おばあさんファンだって増えるでしょう。もうこうなるとアイドルが全世代に向けた文化になっていくわけで。 明大:ジャニーズ事務所は60年近く続いているじゃないですか。ハロプロが目指すべきはズバリ言ってジャニーズだと思う。あるいは宝塚歌劇団。宝塚ファンは親子2世代、あるいは3世代で応援しているパターンも多いですからね。
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スキャンダルで傷ついた心をどう修復した?
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出版社勤務を経て、フリーのライター/編集者に。エンタメ誌、週刊誌、女性誌、各種Web媒体などで執筆をおこなう。芸能を中心に、貧困や社会問題などの取材も得意としている。著書に『韓流エンタメ日本侵攻戦略』(扶桑社新書)、『アイドルに捧げた青春 アップアップガールズ(仮)の真実』(竹書房)。

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