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高校中退、アイドル解雇。絶望から天職を見つけるまでの波乱万丈

リング上で整形を告白「爪痕を残したかった」

伊藤麻希

現在はリングの上で歓声を浴びる伊藤さん。写真提供:DDTプロレスリング

「世界で一番かわいいのは?」 「伊藤ちゃーん!」  ここはライブハウスではない。プロレス会場だ。いま、彼女とファンの間では、こんなコール&レスポンスが繰り広げられている。元アイドルの片鱗が垣間見られるが、かわいいことには人一倍こだわりをもっている。じつは、リング上で「整形」を告白し、衝撃を与えた過去がある。  アイドル時代の伊藤さんのキャラと言えば「顔がでかい」。ネタ化していたのだが、のちにコンプレックスとして顕在化したという。 「自分ではわからなかったのですが、アイドルになってから“顔が大きいね”って言われるようになったんですよ。当時はキャラクターがあって良かったな、ぐらいで。でも、アイドルを辞めてから、そのキャラクターも必要なくなって。本格的にコンプレックスとして感じるようになったんです」  自身のコンプレックスを克服するため、総額80万かけて小顔整形した。 「ほっぺと顎下の脂肪を吸引。あと、えらの筋肉を発達させないように、ボトックス注射を打ってもらいました。当時、お金がないまま整形したんです。ローンのきつさを知らなかったんですね。返しても返しても利息が大きくて終わりが見えない、“返済するのってこんなに大変なんだ”って。でも去年の11月ぐらいに思い切って一括で払いました!」  レスラーという職業上、顔への攻撃は避けられないが、整形後も試合に出場していたという。 「私の場合は、縫う手術ではなく脂肪吸引だったから、蹴られようが叩かれようが大丈夫だったんですよ。整形した次の日からは、舞台の仕事もあって。稽古に行ったんですけど、顔がマヒして喋れなかった。噛みまくりながら頑張りました」  彼女は試合後のマイクパフォーマンスで、自身の整形についてカミングアウトする。 「整形を公表したのが、アジャコングさんとのシングルマッチ後(2019年5月3日、東女の後楽園ホール興行)だったんです。試合でいいところが出せなかったので、なにか爪痕残したいと思って。勢いで公表しちゃいました。あとアジャさん。意外と小顔なんです。私は80万かけたのになって、悔しくなりましたね(笑)」

アイドル時代の基礎がレスラーとして活きている

伊藤麻希 今年2月、彼女にとって夢のひとつだった、アメリカのプロレス団体『AEW』に出場を果たした。一見、直感と勢いだけで生きてきたようにも思われるかもしれない。だが、数々の苦悩を乗り越え、“エンターテイメントの世界で生きる”と腹を決めてからは、しっかりとロードマップが描かれていた。 「AEWに出ることが夢でした。それを叶えるために、“叶えた時の自分”がどうなっているのか想像し、そこから逆算してみて、今やるべきことを明確にしました。たとえば、“英語が喋れる”とか“アメリカでウケるキャラクター”などの特徴を書き出して。理想の姿に近づけようって、ここ2年間くらい努力してきたんです」  アイドル時代に培った経験も決して無駄ではなかった。パフォーマンスの見せ方が、レスラーとして活動するうえでも役立っているという。 「人前に立って楽しませることの基礎は、アイドル時代に学んだもの。レスラーとしてはベルトも欲しいですけど、それよりもオンリーワンになりたいんです。エンターテイメントで人を喜ばせたい。ファンから『心に残った』と言ってもらえたら嬉しいです」 【伊藤麻希】 ’95年、福岡県出身。アイドルグループ『LinQ』のメンバーとして活動後は、エンターテイメントユニット『トキヲイキル』に所属。現在は、東京女子プロレスにて、レスラーとして活躍中。Twitter:@maki_itoh <取材・文/池守りぜね、撮影/藤井厚年>
出版社やWeb媒体の編集者を経て、フリーライターに。趣味はプロレス観戦。ライブハウスに通い続けて四半世紀以上。家族で音楽フェスに行くのが幸せ。X(旧Twitter):@rizeneration
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