お金

アコムとレイクの「いつでも狩れる」という凄腕感は電話越しにも伝わってくる

消費者金融の「フット・イン・ザ・ドア」

「犬さんご本人のお電話ですか?」 「そうですが」 「アコムです」  彼らは最初に名乗らない。玄関の扉を開けさせ、一歩目を踏み込んだ後に刺しにくる。僕はこれをフット・イン・ザ・ドアと呼んでいる。だが僕はもう臆さない。 「登録された住所に書類を送ったんですが届いてないみたいなんですよね。お引っ越しされましたか?」 「実は、今家を借りていなくて……」  アコムから金を借りたのは僕のほうなのに、まるで返済のせいで家を失ったかのような言い方をしてから、もう少し手心を加えてやれば良かったと思う。だがそれも消費者金融相手だと杞憂に過ぎない。 「そうですか。もう半年くらいちゃんとした金額払ってもらってないんですけど、今いくら持ってます?」  返済を遅らせれば遅らせるほど、消費者金融側のコールセンターの担当者が強くなっていく。おそらく同じコールセンターの中にも初級・中級・上級のような階級が存在していて、敵の強さに応じて出陣する担当者を変えているのだろう。  僕の担当はおそらく「声を荒げないけど泣き落としには一切動じないタイプ」で、呼吸で例えるならば水。どれだけ悲惨な現状を訴えてきても譲歩はしない。誠実な魂と大声で気持ちを揺らしてくるタイプじゃなくて本当に良かった。きっとそういう担当者もいるに違いない。

「な・る・ほ・ど・で・すゥ〜・・・」の意味

「今払えるのは5000円ですね」  なればこそ、こちらも毅然とした態度で臨む。もう1円も持ってないなんてことは言わない。ハッキリと返済の意思があるところを見せる。 「な・る・ほ・ど・で・すゥ〜・・・うん、はい! まあいいです、とりあえず今それだけ払ってもらって、また来月電話ください」  この「な・る・ほ・ど・で・すゥ〜・・・」は、より上位の担当者であるほどよく使う。 「現状はわかりました。ただ納得はできませんね。今回は一旦譲歩として受け取りますが、完全に条件が決まったわけではないということは認識しておいてください。」という意味だ。  こうして5000円を振り込み、1か月の延命措置を取ったのだが、最終的には毎月1万円以上を支払わなければならない。そして利息についてはまだ触れていないので、止まるかどうかも決まっていない。  一度足を止めたアキレスが再び立ち上がって亀に追いつくために、亀の歩みを止めることは最重要だった。並のクレジットカード会社は亀の向こうから手を振り、「おいでおいで」としてくれるが、消費者金融は亀に車輪をつけたりしてくる。  アコムに関しての現状報告は以上となる。これまで電話を全然してこなかった彼らが、住所を変えた瞬間に一度だけ電話をしてくるのは、「いつでも狩れる」証明だ。今回は、山が少しだけ動いた。
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自分を罰するために禁煙を
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フィリピンのカジノで1万円が700万円になった経験からカジノにドはまり。その後仕事を辞めて、全財産をかけてカジノに乗り込んだが、そこで大負け。全財産を失い借金まみれに。その後は職を転々としつつ、総額500万円にもなる借金を返す日々。Twitter、noteでカジノですべてを失った経験や、日々のギャンブル遊びについて情報を発信している。 Twitter→@slave_of_girls note→ギャンブル依存症 Youtube→賭博狂の詩

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