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東京五輪ウガンダ選手団から陽性者続出。日本の空港検疫はどうなっているのか?

世界中から変異株を招き入れた日本の空港検疫

 5月以前は、この空港を出た後の自己検疫が、誓約書任せで何もないに等しい筒抜けでしたので、それが故に世界中から変異株が市中に侵入してα(アルファ)株による第4波エピデミックとなり、6000〜8000人が犠牲となりました。  そして本邦では、現在δ(デルタ)株による第5波エピデミックが始まっています。筆者とほぼ同時にロスアラモス国立研究所(LANL)は、日本で7月第2週には第5波エピデミックSurgeが発生するという予測を公開しています。  また、Our World in Data(OWID)によれば、本邦の日毎新規感染者数は、2021/06/22発表の統計をもって増加に転じています。これは5月時点での筆者の予測より60日近く早く、筆者はたいへんに驚いています。既に東京都では第5波エピデミックSurgeが14日間全国に先行して始まっており、東京都が第5波のエピセンターであろうと考えられます。
日本、韓国、台湾における百万人あたり日毎新規感染者数の推移(ppm 7日移動平均 線形)2021/03/01-2021/06/23

日本、韓国、台湾における百万人あたり日毎新規感染者数の推移(ppm 7日移動平均 線形)2021/03/01-2021/06/23(出典:OWID

 オリンピック選手・関係者の場合、搭乗前96時間以内に2回の検査を義務づけられているのですが、残念ながら2回目の搭乗前検査の前72時間以内の感染者は不感期間なので発見できません。検査を2回にしているので不確実性は大きく減じていますが、最低10日間程度の検疫留置をしなければ必ずすり抜ける集団が生じます。  これもCOVID-19の厄介なところですが、ウィルスへの曝露後平均5日後に発症するものが、曝露後14日後でないと発症しない人もいます。筆者の記憶では、28日経って発症したという症例がありますが、その接触記録が正しいかは分かりません。冒頭で図示したCOVID-19の症状と検査への反応の経時変化は、あくまで平均値です。

五輪選手への「検疫留置無用」が招きかねない最悪の事態

 タイでは、入国後16日間の検疫留置ですが、各国の実績から、14日間留置しないとすり抜けの可能性は残っていると考えられており、すり抜けられると市中感染が始まります。  検疫留置の確実性を高める為に検疫留置初日、途中日と最終日の3回のPCR検査がありますが、これでも水も漏らさないわけではありません。ある程度の妥協の産物です。これを全入国者に行っているのが東部アジア・大洋州諸国の多くです。  オリンピック選手の場合、本邦では検疫留置を事実上なくしてしまっているため、人数の多さからもウィルスの持ち込みは確実に発生します。そして、持ち込みを見つけたときには感染連鎖が始まった後となります。  更に選手達は、毎日PCR検査の筈が、唾液抗原定性検査にすり替わっておりこれは不顕性感染者のスクリーニングに最も向いていません。これらが東京オリンピックをスーパースプレッダイベントにしかねない理由の一つです。  既に来日選手団に早速持ち込み感染者が見つかっていますが、回復期でない限りPCR検査で陽性と判定される人は、ほぼ感染力を持っていますので、見つかったときにはその接触者は全員14日検疫留置対象(含む自己検疫)でなければなりません。それをしなければ14日以内にクラスタ発生の可能性があります。  実際には、ウガンダ選手団は、そのまま事前キャンプ地にバスで移動してしまいましたが、その後全員「濃厚接触者」と報じられ、一名が検査陽性となりました。  いくら注意を払っても検疫留置せずに移動してしまえばかならず接触者が増えてゆきます。この「濃厚接触者」という厚労省が楽をする為の定義は止めるべきです。  そもそも空港検疫後には接触者の評価をせず、濃厚接触者の判定は到着地の保健所が行う*ということはそれまでに接触者を大量に発生させ、感染拡大してしまう可能性があります。市中での接触者は全員自己検疫対象の台湾は、遙かに優秀な成果を残しています。  台湾で2021/05/10に国際線パイロットの持ち込みという検疫の穴から始まった第2波エピデミックSurgeも小規模で制圧しつつあります。このとき台湾は徹底検査と徹底した国内での自己検疫を行っています。 〈*「濃厚接触者」保健所が調査 選手団…空港検疫ではなく 2021/06/22 FNN プライムオンライン
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ワクチン接種済みなのに何故感染?
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まきた ひろし●Twitter ID:@BB45_Colorado。著述家・工学博士。徳島大学助手を経て高知工科大学助教、元コロラド大学コロラドスプリングス校客員教授。勤務先大学との関係が著しく悪化し心身を痛めた後解雇。1年半の沈黙の後著述家として再起。本来の専門は、分子反応論、錯体化学、鉱物化学、ワイドギャップ半導体だが、原子力及び核、軍事については、独自に調査・取材を進めてきた。原発問題について、そして2020年4月からは新型コロナウィルス・パンデミックについてのメルマガ「コロラド博士メルマガ(定期便)」好評配信中

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