更新日:2023年08月30日 20:12
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廃墟化が進む「迷惑大仏」の末路。全国に点在、まるで時限爆弾

解体工事と再建のメド

大仏

沖縄県・沖縄市 琉球金宮観音菩薩 25m 2018年移設
移設からわずか5か月で台風によって倒壊した悲劇の観音像。手を付けず顔面から階段に突っ込んだ姿が痛々しい

 全国にはランドマークとして人々から愛される巨大仏もあるが、うさみ大観音のように廃墟化が進む「迷惑大仏」も少なくない。その多くはバブル期前後に客寄せとして造られたものだ。  不動産業で財をなした男性が、淡路島に観光施設として80mの世界平和大観音像を建てたのは’82年のこと。当初は物珍しさから観光客を集めたが、徐々に人気は薄れていく。  所有者の男性が’88年に死亡し、営業を引き継いだ妻も亡くなると、遺族は相続を放棄。この間に老朽化が進み、近隣に破片が落ちてくるなど崩落の危険が高まったため、所有権を得た財務省近畿財務局によって、8億8000万円もの税金を投入した解体工事が今年6月に始まっている。  ’18年4月に福岡県の飯塚市の山腹から沖縄市の東南植物楽園へ移設された琉球金宮観音菩薩像は、同年9月の台風24号で根元から倒壊。翌年の再建を目指すと報道されたが、問い合わせた園の担当者は「再建のメドは立っていませんので、現時点でお答えできることはありません……」と、あまり触れてほしくない様子だった。

耐用年数を迎えつつあるバブル期建立の「迷惑大仏」

大仏

石川県・加賀市 加賀大観音 73m 1982年建立
不動産業の社長がレジャー施設と共に造立。施設は閉鎖し、所有者は転々とした

 観音を含む大仏は全国に500体を数え、40mを超える巨大仏が15体含まれる。巨大仏は鉄筋コンクリート造の高層ビルのような構造で、定期的な点検・補修が必須だが、当然コストはバカにならない。久留米大観音は30年ぶりの色直し中で、費用は2億円。新たな試みとして、クラウドファンディングで支援金が集められた。  建築エコノミストの森山高至氏はバブル期に建てられた巨大仏が耐用年数に達していると話す。 「表面仕上げの劣化が一番の問題。ビルも10年ごとに補修を繰り返さなければ、ヒビや剥がれが生じます。淡路の大観音はモルタル仕上げで、木造モルタルアパートの壁面と同等の表面保護力しかない。放っておくと劣化は内部まで進行して、30年ともちません」  奈良の大仏のように銅板で覆った牛久大仏は例外で、ビル以上の耐久性が期待できるという。 「牛久大仏を施工した川田工業は耐久性が求められる橋梁建築で有名で、ロボットまで作るハイテク企業ですから、よく考えられています。銅は腐食に強く、『鋼の錬金術師』のアルフォンスみたいに中身が空洞のため軽量です。しかし、全国には長期の耐久性を考慮せず、勢いで作ったとしか思えないものも多い。奈良時代の人たちのほうがよほど先を見据えていたのでは」  空き家問題と同様、大仏問題は全国各地で時限爆弾のように破裂する可能性を孕んでいる。
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「積極的放置」も必要な時代になった
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