更新日:2023年08月30日 20:12
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廃墟化が進む「迷惑大仏」の末路。全国に点在、まるで時限爆弾

「積極的放置」も必要な時代になった

大仏

北海道・芦別市 北海道大観音 88m 1989年建立
閉山した炭鉱町を活性化すべく、’89年にレジャーランド内に造立。現在は宗教法人が所有しているが、廃墟化が進んでいる

 そもそも、「迷惑大仏」は将来のリスクを考慮せずに建てられたのか。内閣府地域活性化伝道師も務める地方創生のスペシャリスト・木下斉氏が解説する。 「バブル期に公共施設やインフラを造るとき、先々までの維持管理を考えることは一切ありませんでした。公共施設ですら『一生もつものじゃなく、維持費、更新費が必要』と認識されたのは’00年頃ぐらいからで、ごく最近のこと。『迷惑大仏』は民間人が造ったとしても自治体が開発許可を出したから建っています。建設需要などで短期的には潤う人たちもいて、地域の話題作りにいいことだと。『メンテナンス? そんなもの後々考えりゃいい』という考えです」  そのツケが今、全国各地で噴出しており、今回、税金を投入して取り壊すことになった淡路島の「迷惑観音」のケースは、その最たるものだろう。 「全国の空き家だけでもすでに846万戸に上り、学校は年によっては年間約500校が廃校になります。これらの取り壊しをきめ細やかに税金でやろうとすれば、未来に向けて使える予算が減っていく。このトレードオフ(二律背反)は考えなければいけません。利活用の道を考えつつ、当面の危険性がない『迷惑大仏』などは、周囲を立ち入り禁止にして『積極的放置』も必要になってきます」

廃墟を増やさないために

 ただ、皮肉なことに地方自治体は、自ら廃墟を増やし続けているのが現状のようだ。 「日本人は明治以降人口拡大の社会で生きてきたので、何でもどんどん作るのが正義だと思い込んでいます。その証拠に、大仏処理に悩むような町ですら、空き家が毎年大量に生まれているのに、自治体は脈略なく新たな土地に新築住宅開発や施設開発の許可を出しており、将来の廃墟を今も作り続けている。過去の施設の廃墟化への対策だけでなく、少なくともこれから廃墟を増やさないように、町の総容積での開発調整など工夫すべきでしょう」  廃墟対策は待ったなしだ。
大仏

森山高至氏

【建築エコノミスト・森山高至】 一級建築士。建築設計事務所を運営し、建築と経済に関するコンサルタントのかたわら、サブカルチャーにも造詣が深い
大仏

木下 斉氏

【まちビジネス事業家・木下 斉】 町づくりの政策立案をするエリア・イノベーション・アライアンス代表。内閣官房地域活性化伝道師。近著に『まちづくり幻想』など 取材・文/池田 潮 写真/時事通信社 PIXTA
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