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サッカー日本代表、アジア最終予選に黄色信号。選手、スタッフ間に漂う慢心

コロナ禍での制限は始まる前から分かっていた

サッカー日本代表

写真提供/JFA

 このコンディション調整に関しては、森保一監督も反省の弁を述べている。 「9月の海外組は移籍問題であったり、所属チームでもプレシーズンでいろいろな戦術を学んでいたりします。国内組の選手もずっとシーズンを戦っていく中で夏場の厳しいシーズンを乗り越えるというか、ちょうど疲労が出てくるようなところで招集して試合をしなければいけないという部分の難しさ本当に感じました。今回はコロナの制限で3日間ルールがあり、帰国してもそれが適用されなければおそらく冨安とか守田も招集できていたかもしれないですけど、そういうコロナの制限の中で招集等々も本当に考えながら戦っていかなければいけない」  大会を追うたびに海外組が増えているとはいえ、9月の難しさが今に始まった話ではない。また、コロナ禍による制限も急に決まったルールではない。それらを踏まえると、ホームとアウェイで招集メンバーを変更することもできたし、多めの人数を招集してコンディションを確認してから試合に臨むメンバーを決めるという方法もあったはずだ。  いずれにしても今回は招集前の確認に不備があり、技術委員会はじめとした日本サッカー協会の慢心や怠慢が招いた結果である。コンディション不良だった彼らが明らかに突出していて、不調でも彼らのほうがレベルが高く勝てるという状態だったら話は別だが、現状の日本代表は今回の招集メンバーのみに依存しなければならないほど選手層が薄いのかは甚だ疑問に感じるところだ。

中国戦での勝利は何を意味するのか

サッカー日本代表

写真提供/JFA

 相手と戦う以前に苦しい状況に陥っていた今回の日本代表だったが、2戦目の中国戦では見事に勝利し勝ち点3をもぎ取っている。しかし、たかだか5日間で状況が好転したわけではない。それでも選手らは自らが話し合いを持ってリバウンドメンタリティーを発揮。追い込まれたプレッシャーをポジティブに変換して、勝利への意欲を見せてくれた試合だった。  それだけで勝てるほど最終予選の相手は弱くなく、今回の日本代表は2つの幸運に恵まれた。ひとつは開催スタジアムの環境だ。カタールといえば暑いイメージがあり、実際に9月の平均最高気温は37度で平均最低気温でも28度となっている。湿度も50%を超える高温多湿な状況である。  しかし、今回の開催されたハリーファ国際スタジムは2022年のワールドカップを控えて、2017年に空調システムを新設。23度に保つように設定されたスタジアムは今の日本の環境よりも動きやすい状況で、コンディション不良を目立たなくさせた。フィジカル的に不調な選手が多い日本代表にとって、ピッチコンディションが好材料となった。  もうひとつは、相手の戦略に助けられた。中国はオマーンとは違い後ろに引いてゴール前でブロックを敷き、失点を避ける負けないようにするための戦略を選択。5バックは想定外だったようだが、日本代表にとってはアジアを戦う上で常に想定してきた戦い方となった。  また、中国はこの戦略により攻め手を失い自滅に近い状態になってくれたことも幸運だった。中国は後半の途中からシステムを変更し積極的に前へ出るようになったが、日本代表はそれをいなして1点を守り切った形だ。中国が最初から前へ出るスタイルをとってきたほうが、日本代表はさらに苦戦した可能性が高い。
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対戦国から研究されるのが当たり前
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スポーツライター。日本最大級だったサッカーの有料メディアを有するIT企業で、コンテンツ制作を行いスポーツ業界と関わり始める。そのなかで有名海外クラブとのビジネス立ち上げなどに関わる。その後サッカー専門誌「ストライカーDX」編集部を経て、独立。現在はサッカーを中心にスポーツコンテンツ制作に携わる
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