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サッカー日本代表、アジア最終予選に黄色信号。選手、スタッフ間に漂う慢心

対戦国から研究されるのが当たり前

サッカー日本代表

写真提供/JFA

 振り返ると、オマーンも中国も日本代表のことをリスペクトしてよく研究してきていた。それぞれに採用した戦略は異なり、結果から言えばオマーンの戦略が成功したことになる。これは、そのまま今後の日本代表の課題ととらえるべきだ。  まずはゴール前を固めることを優先した中国は全員が自陣に戻り、相手が近づいてきてからプレスをかけることを選択。シュートチャンスとなるところでスペースを与えないような守備だった。  一方のオマーンはパスの出どころを押さえようと前線から積極的にプレスをかけてきた。また、前線からディフェンスラインまでをコンパンクトに保った上でサイドの選手を中央へ絞った位置に配置。パスの受け手となる選手にスペースを与えないように守って、日本代表のパスサッカーを封じてきた。  グループBにはオマーン、中国の他にサウジアラビア、オーストラリア、ベトナムが属しており、いずれの対戦相手も日本対策としてオマーン式か中国式を採用してくるだろう。今回の日本代表はそのいずれに対しても効果的な対策を練れておらず、その打開策を見出すことが今後の大きな課題と言える。

日本代表の選手層は厚い

 ただ、今の日本代表が持つ本来の力を持ってすれば、それほど難解な課題ではないだろう。今の日本代表の選手層は厚く、特徴の異なる選手もそろい多様性も見られるようになってきた。アジアレベルであれば、相手よりボール保持の時間を多くするパスサッカーのコンセプトを崩さずに勝ち切ることができるはずだ。そのために、どうやってゴールを奪うかの道筋について、もう一度考えて多くのパターンを生み出してほしい。  オマーン戦で言えば、中央は閉められていたが比較的にサイドは空いていた。特に、前半はサイドでフリーの選手に渡り、そこを起点としてクロスボールが何本か上がっている。しかし、そのボールに合わせるべき大迫勇也や鎌田大地は攻撃の起点をつくろうとして、よりスペースのある後方まで下がってボールを受けようとしていたためゴール前へ入るのに遅れてしまっていた。  また、2列目のサイドには伊東純也と原口元気というどちらも外に張ってボールを受けることを好むウイングタイプで、逆サイドからのクロスに合わせるためにゴール前に入るセカンドストライカータイプではなかった。もちろん、相手の状況によるがアウトサイドで崩してクロスを中心にゴールを狙うのであれば、2列目の片方は南野拓実や古橋亨梧のようなセカンドストライカータイプを選択することでゴールの確率は上げられるはずだ。  中国戦で言えば、久保建英が効果的な働きを見せた。ゴール前にもサイドにもほとんどスペースがない状況だったが、ドリブルとコンビネーションを駆使して相手ゴールに迫り幾度となく好機を演出した。オリンピックを機に久保建英とのコンビネーションプレーの質を高めた堂安律を起用すれば、さらに好機を増やせたかもしれない。
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スポーツライター。日本最大級だったサッカーの有料メディアを有するIT企業で、コンテンツ制作を行いスポーツ業界と関わり始める。そのなかで有名海外クラブとのビジネス立ち上げなどに関わる。その後サッカー専門誌「ストライカーDX」編集部を経て、独立。現在はサッカーを中心にスポーツコンテンツ制作に携わる
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