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コロナ禍で病床数が足りない今、自衛隊病院の廃止・縮小は本当に必要か?

海上自衛隊では5つの病院のうち3つが削減対象

自衛隊佐世保病院

 自衛隊病院は全国にわずか15しかありませんが、そのうちの5病院が削減されます。海上自衛隊では5つの病院のうち削減対象となるのは3病院。現在、南西諸島沖や台湾周辺で実弾の飛び交う本物の軍事侵攻が起きてもおかしくない雲行きですが、そんな折も折に、国境線の防衛の要と言っていい海上自衛隊の病院でもっとも病床数が削られるのです。自衛隊病院を一度なくせば、有事に爆創や銃創のような治療する病院がなくなります。出撃で負傷した自衛隊員を治療する病院削減は自衛隊員を見殺しするようなもの……。それでも自衛隊員は戦ってくれるのでしょうか? 日本国は自衛隊員の命を軽視しているとしか思えません。この国の良心を疑います。 「わたくしは自衛隊の医療スタッフですから、目の前の患者に向き合って全力を尽くすだけです。でも、悔しいです」  海上自衛隊の医療スタッフから、そんな悲痛な思いをしたためた手紙が届きました。 「全国の海上自衛隊の航空衛生隊や医官も後に残った横須賀病院などに集約されます。一般の患者さんも受け入れている横須賀病院が海上自衛隊の基幹病院として衛星隊員や医療スタッフの教育や様々な診療を行い、有事の際には移動衛生班を派遣することになっています。でも、5つあった病院が2つになるわけですから、能力はこれまでどおりではないでしょう。間違いなく低減します」  やるせない心情が伝わってくる内容です。

隊員を「便利な道具」扱いし続ければ人材は枯渇する

 自衛隊病院の廃止・縮小は2009年に決まっています。南西諸島沖に出撃して負傷した海上自衛隊員はこれまでは佐世保病院に搬送できましたが、横須賀病院まで搬送先が伸びました。戦傷は時間との勝負です。国に、有事に負傷した自衛隊員の命を救うつもりがあればこのような選択はできません。自衛隊員への処遇はその職務に見合っていると思えないことばかりですが、自衛隊員の命までも軽視するのでは悲しすぎます。自衛隊員をただの便利な道具のように扱えば、勇敢な自衛隊員は一人もいなくなるでしょう。  南西諸島沖紛争時には護衛艦内で外科的な処置して自衛隊中央病院や横須賀病院などに搬送すればいいと政府は考えているようですが、戦時治療は早ければ早いほどいいのは当然の話。病院が遠ければ遠いほど人命は失われていくのですから。
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新型コロナウイルス感染症患者の病床数は足りないまま
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おがさわら・りえ◎国防ジャーナリスト、自衛官守る会代表。著書に『自衛隊員は基地のトイレットペーパーを「自腹」で買う』(扶桑社新書)。『月刊Hanada』『正論』『WiLL』『夕刊フジ』等にも寄稿する。雅号・静苑。@riekabot


自衛隊員は基地のトイレットペーパーを「自腹」で買う

日本の安全保障を担う自衛隊員が、理不尽な環境で日々の激務に耐え忍んでいる……


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