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マカヒキだけじゃない。競馬史に残る復活劇ベスト5

ジュニアチャンプの骨折 早熟評を覆したグラスワンダー

第1位 1998年 有馬記念 グラスワンダー  競馬史に残る復活劇、第1位は、グラスワンダーとした。  1997年デビューのグラスワンダーは、外国産馬全盛期の時代においても、同世代のエルコンドルパサーとともに突出した存在だった。デビュー前から注目を集めており、その評判に違わぬ圧勝に次ぐ圧勝で朝日杯3歳ステークス(当時)を無敗で制覇。  当時はまだ外国産馬にクラシック出走権はなかったが、その圧倒的なパフォーマンスから、前途への期待は大きかった。だが翌年春、そのキャリアは暗転する。復帰戦へ向けての調整中に骨折が判明、長期の休養を余儀なくされたのだ。休養と経てようやく復帰を迎えたのは1998年の秋、毎日王冠だった。  もっとも、このレースには強力なライバルが集っていた。当時、圧倒的なスピードで古馬になり連戦連勝を重ねていたサイレンススズカ。そして、デビュー以来無傷の連勝を続けていたエルコンドルパサー。当時G1を超えるG2といわれ、東京競馬場には大観衆が押し寄せていた。  レースではサイレンススズカが前評判通り楽々と逃げ切り、エルコンドルパサーが唯一食い下がって2着。それに対し、グラスワンダーは強気に仕掛けるも直線は後続に交わされ5着。明暗がクッキリと分かれた一戦だった。  その後G2のアルゼンチン共和国杯に出走したものの、こちらでも結果を出せず6着。大事な成長期を棒に振った影響は大きかったのか、復活への糸口を掴めずにいた。

最強にして最高のメンバーが揃った1998年の有馬記念

TARO

競馬予想家・TARO氏

 デビュー当時の衝撃があまりに強かったことと、当時の外国産馬は早熟傾向も強かったため、「もう終わった」などと囁かれるようになっていた。そんな中で出走してきたのが1998年の有馬記念だった。  だが、このレースには当時としては最高のメンバーが揃っていた。2冠馬セイウンスカイ、最強牝馬エアグルーヴ、前年の覇者シルクジャスティス、天皇賞(春)の覇者メジロブライト…。豪華メンバーの中で、復帰後は不振にあえいでいたグラスワンダーに対し、さすがにファンにも懐疑的な目を向け始めており、当日は4番人気・単勝14.5倍と、伏兵の一角を担う1頭に過ぎなかった。  だが、レースではではこれまでと一変した走りを見せる。道中はゆったりと中団を追走すると、いよいよ復活を遂げる姿を見せつけたのは第3コーナーのカーブだった。セイウンスカイが軽快に逃げる中、外から一気にギアを上げる栗毛の馬体、グラスワンダーだった。  これまでの2戦とはまったく違うその手応えに、場内は大歓声に包まれた。直線に入ると逃げるセイウンスカイを射程に捕え、早くも先頭に立つグラスワンダー。その手応えは他馬が止まって見えるほどで、最後は追い込んで来たメジロブライトを退け勝利。3歳の頂点に立った馬は、やはり4歳でも強かった。  圧倒的な強さで勝ち続ける馬もいれば、栄光から転落し、もがく馬もいる。最強馬以上に復活を遂げる馬には多くのドラマがあるのだ。 文/TARO
競馬予想ブログとしては屈指の人気を誇る『TAROの競馬』を主宰する気鋭の競馬予想家。12月5日に最新刊『馬券力の正体 収支の8割は予想力以外で決まる』(オーパーツ・パブリッシング)が発売になった。著書は他に『競馬記者では絶対に書けない騎手の取扱説明書』(ガイドワークス)、『回収率を上げる競馬脳の作り方』『回収率が飛躍的に上がる3つの馬券メソッド』(扶桑社)が発売中。
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