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人気コスメのLUSH、SNS一斉停止で賛否両論。「15億円の損失」も厭わない

ラッシュが脱SNSを決断した真相は?

脱SNS

店舗を訪れるお客様からは、脱SNSに対するアクションに対してポジティブな意見をもらうことが多いという

 コロナ禍でどのメーカーもオンラインでのコミュニケーションに注力するなか、ラッシュは2021年11月26日に、主要なSNSアカウントから一斉にサインアウトする異例の発表を行った。  日本ではFacebook、Instagram、TikTokの3つが対象となり、これまで消費者との接点を作るために運用していたSNSを突然停止させたことに対し、大きな波紋を呼んでいる状況だ。  多くの消費者とコミュニケーションするのに便利なSNSから、なぜサインアウトする決断を下したのか。  飯村さんは「SNSが弊害をもたらすとわかっているのに、SNSを活用してお客様を誘導することに対して疑問を感じた」とし、このように説明した。 「使っている方への問題提起というよりも、SNSを運営するプラットフォーマー側への問題提起の側面が強いです。今年9月にFacebook社(現Meta社)の実態が内部告発されたのが契機になっていて、同社のプラットフォームはメンタルヘルスに悪影響を及ぼすという調査結果を知りながら、利益を優先して改善に繋げる行動を取らなかった姿勢に対し、非常に懐疑的に思ったんです。ラッシュは数年前から、企業活動の一環としてメンタルヘルスやウェルビーイングの啓蒙を図り、お客様にメンタルヘルスケアやデジタルデトックスの大切さを提唱してきました。  これまでも多くの社会的課題と向き合い、ブランドが考える主張を発信してきましたが、今回発覚したSNSの倫理感に欠ける現実を目の当たりにしたとき、『害を与えると知っていながらインスタグラム等でコミュニケーションを続けるのはどうなのか』と考えるようになりました。こうした背景から、今こそお客様と交流するための別の方法を見出すべきタイミングだと考え、一斉にサインアウトする意思決定をグローバルで行なったのです」

「15億円の損失」よりも「消費者の安全」が大切

lush ただ、あくまで反SNSを掲げるのではなく「プラットフォーム側が今よりも安全な環境をユーザーに提供できるようになるまで、サインアウトした状態を続ける」というスタンスを取っているという。 「社会をよりポジティブにしていくため、ラッシュの企業姿勢を世の中に広めることで、SNSとの向き合い方を改めて考えるきっかけづくりになればいいと思っています。多様な価値観があり、さまざまな賛否両論も巻き起こっています。  ですが、企業の責任としてお客様に何を提供すべきか。最善なコミュニケーションの仕方はどのようなものか。というのを模索していきながら、ラッシュも企業としてのユーザーとしてSNSに依存することなく、新たなコミュニケーションの場を構築できるように考えていきたいと思います」  ラッシュ共同創立者であり、商品開発を務めるマーク・コンスタンティン氏は「これまで運用していたSNSアカウントを止めることで、15億円以上の損失を被る可能性がある」と言及している。  利益を取るか、お客様の安全を優先するか——。  双方を天秤に掛けたとき、ラッシュの原動力になっている倫理観や価値観の尊重こそブランドの守るべき信念と捉え、売り上げへの打撃を厭わない決断を下したのだ。  確固たるブランドのパーパス(存在意義)を軸に、企業のあるべき姿を社会に発信していく取り組みは、非常に参考となるのではないだろうか。 lush 最後に今後の展望について飯村さんへ聞いた。 「LUSH 新宿店はアジア最大の旗艦店なので、ラッシュにおけるビジネスの真髄である“フレッシュさ”を今後も伝えられるようにしていきたいと思っています。当店限定のフレッシュ&フラワー コレクションや、全商品の6割を占めるネイキッド(パッケージレス)アイテムなど、ラッシュの世界観を伝えつつ、自分自身もフレッシュでいたいと考えています。というのも、私自身17年間ラッシュで働いていますが、今が一番フレッシュで楽しいと感じているんです。これからも、店舗に足を運んでくださるお客様に、居心地の良さと新しい発見を提供できるよう頑張っていきたい」 <取材・文・撮影/古田島大介>
1986年生まれ。立教大卒。ビジネス、旅行、イベント、カルチャーなど興味関心の湧く分野を中心に執筆活動を行う。社会のA面B面、メジャーからアンダーまで足を運び、現場で知ることを大切にしている
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