仕事

コロナ禍で増えた“名ばかり”正社員「収入も休みも減ったのに責任ばかり負わされる」

正社員になったおかげで責任ばかりが増えた

名ばかり正社員 正社員になれば、たとえ、それが名ばかりであったとしても、正社員としての業務を遂行しなければならない。派遣社員から正社員になったばかりに貧乏クジを引いたと嘆くのは、IT関連会社勤務・橋本由依さん(仮名・20代)だ。 「コロナ禍にもかかわらず、親会社が“全員を社員にする”と言ってくれたときは本当に嬉しかったのですが、結局、派遣やバイトを雇うための子会社ができて、そこの社員になった、というだけ。子会社から親会社に出向し、子会社の給料で、親会社の社員の仕事をしなければなりません」(橋本さん)  正社員の仕事を……というが、橋本さんの話を聞いていると、やっていることといえば、親会社の正社員の「尻拭い」にも感じられる。何しろ、親会社の正社員たちが「働き方改革」という、会社が対外的に唱えているだけの「お題目」を厳守すべく休んでいる間に、橋本さんたちは、低賃金で土日祝日も駆り出され、その手当もない。無論、クリスマスも年末年始もない。

給与も休みも減った

「休みの日でも、業務をする際には社員が必ず出社し、派遣だけにならないよう調整していたのですが、私が社員業務を受けることになり、実質的には派遣だけの現場になりました。給与も休みも減り、責任感だけ負わされる」(同)  正社員を増やした、と大いばりの政治家たちは、この名ばかり正社員たちがクリスマスも正月も返上し汗を流すなか、どこかでふんぞり返り、酒でも飲んでいるのかもしれない。  かつては正社員かそれ以外か、で働き方は大きく異なったものだが、今日びは、正社員であってもそこには大きな格差がある。この事実に気が付いているのは、辛酸を舐めている張本人だけなのか。  それとも、皆がなんとなく気がついているのに、自分の下があることに安堵して、見て見ぬふりをしている、そんな可能性も否定はできないだろう。 <取材・文/山口準>
新聞、週刊誌、実話誌、テレビなどで経験を積んだ記者。社会問題やニュースの裏側などをネットメディアに寄稿する。
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