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「風邪と同じではない」コロナ救急医が明かすオミクロンの本当の驚異

「こんなに辛いの初めて」訪問診療の現場に同行

 夜20時過ぎ、東京都・狛江市在住の客から電話が入る。高熱でうかされ、動くのも辛いという。専属ドライバーが全員出払っていたため、代表の菊池氏が車を運転。途中、ドクターを拾い、現場に急行した。  菊地氏は言う。 「まだ20代なので本来なら優先順位は低い。でも、動けないということなので診療に向かうことを決めました。コロナ陽性の疑いが強いため、検体採取を先行したほうがいいとの判断です」  現場のワンルームマンションの一室で、20代の男性は真っ赤な顔をして、体を震わせていた。 「熱がぶわっと出て、こんなに辛いのは初めてです」  すぐに熱を計ると39度5分。2日前に発熱し、今までずっとただ寝たきりで、水分も食事も受け付けなくなり、体力が低下している状態だ。  A医師はすぐに男性に解熱剤を服用させ、水分と栄養補給のための点滴をうちはじめた。同時に、PCR検査を実施。結果は24時間以内に判明し、検査結果を持ってまた往診するシステムなのだという。  A医師は男性に優しく語りかけた。 「極度の脱水症状に陥っていました。辛かったでしょう。陽性かどうかは明日までわかりませんが、これでとりあえず熱は少し下がって楽になると思います」  後日、この男性はオミクロン株への感染が判明した。
ナイトドクター3

現場に携行する救急バック。薬の処方はもちろん、点滴や各種がスムーズに行わるよう中にはあらゆる種類の医療器具が入っていた。カメラマンが使うバックを改造して今に至ったそうだ

一人暮らしに潜む重症化の恐怖

 若い人は感染しても重症化しないという“常識”が流布されていることにA医師はこう警鐘を鳴らす。 「たしかに先日の男性はコロナの症状としては軽症でした。でも若い人の自宅療養を推奨する昨今の政府の方針によって、医療にアクセスできず、発熱による脱水症状などにより、命の危険にさらされるケースが増えています。一人暮らしの方はとくに、こうした状況に備えて非常食や水、解熱剤を常備しておくことを強くおすすめします」  オミクロン株を舐めてはいけない。それを痛感した夜だった。 取材・文/片波 誠
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