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「反ワクチン」は決して崇高な理念ではない。陰謀論に染まらないために気をつけるべきこと

「悪」を作り出し、勧善懲悪の図式に持ち込む手口

 そうした主張にも濃淡があるが、「悪い奴がこの流れを作っている」という「陰謀論」が主流だ。その主な目的は仲間づくりと承認欲求を満たすことであると考察する。  実生活ではそういう妄想癖の人は孤立するかもしれないが、ネット上に同じように「目覚めた」仲間もいるから怖くないのだろう。江戸時代末期の「ええじゃないか」騒動のように、大きな社会不安に陥った時、群れて振り切れてしまう人が一定数出るのも世の常なのかもしれない。  そうした人達が実際に行動を起こしている。街角での「ノーマスク・反ワクチン」のデモ活動だ。この1月に渋谷で1500人規模の行進をした「神真都Q」なる集団は、沿道に向かい「毒入りワクチンだ」「生物兵器だ」「人口削減される」などと訴え、「ワクチンから子どもを守れ」と叫んでいた。やはり「悪」との決めつけだ。こうなると小さき者を守る正義の立場で、堂々と物申せる。

ワクチン非接種を強要するのは単なる迷惑行為である

「巨悪と戦う」とでも意気込んだのであろう参加者は、中高年が大多数。ここでは詳述しないが、こうしたデモ活動が反社会的勢力や宗教団体などの「草刈り場」と化している懸念もある。どんどん危険な場所へと足を踏み入れてしまっているのだ。  もともと孤独な人が仲間欲しさに参戦するのは仕方ないのかもしれないが、これまで周囲との繋がりがあった人はどうだろうか。やはり社会の輪を外れている意識はどこかにあり、周囲との軋轢が不安なのだろう。取材したデモの終着地点では「いやあ、夫がうるさくて」「ご家族は何も言ってきませんか」などと確認し合う声が聞こえた。 「ワクチン陰謀論」は崇高な理念ではない。有り体に言えば、どこまでいっても科学や医学ではなく空想だ。それでも思想や信条は自由だから、ノイジーマイノリティだとしてもネットでの誰かの発信は止めようがない。プラットフォーム側の良識ある対応に期待するのと併せ、それぞれが知識を高めて真偽不明な情報を取捨選択していくしかない。  ただ、8割近い人がワクチンを2回接種した昨今、「打つな」と活動的に集団で押し付けるのは迷惑であり、それこそ接種を強要するのと変わらないことには気付いてほしいものだ。 文/黒猫ドラネコ
九州出身。30代後半のライター。怪しいスピリチュアルや陰謀論、信者ビジネスなどを観察し潜入取材も敢行する。超甘党。 Twitter:@kurodoraneko15
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