成人後、きょうだいとのトラブルに悩まされる事例が後を絶たない。きょうだいが巻き起こす、終わりの見えない骨肉の争いに家族は疲弊し、蝕まれる。そうした、「毒」としか言いようがないきょうだいの実態を追った。 　コンサル業を営む柏木忠道さん（仮名・45歳）は建設作業員の父とパートの母、兄（48歳）の4人家族。柏木さんは結婚・独立していた。 　就職氷河期の洗礼を受けた兄は大学卒業後、飲食店チェーンのアルバイトとして働き一時はリーダーまで上り詰めたが、体を壊して実家で引きこもるようになった。 　そうして5年ほどがたち、見かねた親がそろそろ働くよう促すと「お前らの育て方が悪いから俺がこうなった」などと暴れ、手がつけられなくなった。 　 　ネットゲームにハマり数日間部屋から出てこないかと思えば、夜に窓を開けて大声を上げるなどの奇行を繰り返した。近所でも評判になり、柏木さん一家は恥ずかしい思いをしたという。 　そんなある日、事件が発生する。 「ネットで知り合った女性を妊娠させたんです。無職のくせに……その上、女性と実家で子育てすると言い出して」 　柏木さんは兄が立ち直ることを期待し、総額300万円ほどを貸した。 　さらにフランチャイズ飲食店の開業資金も肩代わりしたが続かず、子供が生まれても働くことはなかった。 　そして柏木さんが離婚を経て再婚し新婚旅行先のハワイに滞在中、兄から罵倒の電話がかかってきた。 「『自分だけハワイに行きやがって』と……。兄の口癖は、『俺だけ運が悪い』。さんざん助けてやったのになぜなのか」 　自身を憎みつつ依存してくる兄の今後を憂い、柏木さんは肩を落とす。