更新日:2022年05月06日 22:18
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首は頭を支え、手首は手を支えている。では乳首は何を支えているのか?

 

流れを変えるために僕は雑学を持ち出した

「そういえば首の話なんですけど」  話を切り替えるため僕が切り出した。浅井さんの話が始まるとどんよりとした雰囲気が流れるからだ。国が悪い、政治が悪い、年金制度が悪いと、自身の不遇の原因を一通り語り、最終的には浅井さんの実家が太いからあまり働く必要がない、という結論に達する講和だ。実家が太くない僕らはしょんぼりするだけのやつだ。 「首って面白いですよね。単に頭と胴体を繋ぐ部位という意味合い以外でも使われる」  党首、首長、首位、船首など、何らかのカテゴリでトップであることを示すときに「首」という漢字が使われる。これは一説によると、いつからそうなったかは定かではないけど、刑罰や戦闘などにおいて首を切り頭を落とす習慣からきているらしい。切り落とされた頭部自体を「くび」と呼ぶようになり、頭部と首が同じ意味合いになった。それが転じて、カテゴリ内の頭、つまりトップを首と表現するようになった(※諸説あります)。 「ただ、首って人体にはそれ以外にもあるじゃないですか」  手首、足首だ。手や足のくびれの部分にも「首」が用いられる。これは完全に「頭」としての意味合いとは異なる。では、これはなにを現した「首」なのだろうか。

「首」という言葉は大事な部分を支えるという意味合いを持つ

「実は大切な部位を支えるのが首なんですよ」  頭部はいうまでもなく人体において最も重要な部位だ。全身を司る脳がある。それを支えるための部位に「首」とつく。  手もそうだ。手は第二の脳とまで言われている存在だ。3000種類以上の動きができ複雑な動作にも対応、微妙な感覚の違いも感じることができる。冷静に考えると手とはかなり高性能な部位なのだ。一説によると表面積で体の1/10程度しかない手を動かすために脳機能の1/3が使われているという。そんな重要器官である手を支えるのに「手首」と首の表現が使われる。  足首だってそうだ。そもそも足首は足だけではなく体全体を支えている。立つことも、移動することも、人間の動的活動のほとんどが足首の支えによって実現されている。そういった重要部位どころか体全体を支える場所に「足首」と首が使われるのだ。 「何か重要な場所を支えるのに首が使われるんです」  僕の言葉にタツさんと遠山さんが頷く。遠山さんを太い首を震わせて頷いており、またシャツがはちきれるんじゃないかと心配したほどだ。 「じゃあ乳首はどうでしょう」  僕はここからが本題とばかりに切り出した。
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乳首が支えているものについて、答えの出ない議論が始まった
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テキストサイト管理人。初代管理サイト「Numeri」で発表した悪質業者や援助交際女子高生と対峙する「対決シリーズ」が話題となり、以降さまざまな媒体に寄稿。発表する記事のほとんどで伝説的バズを生み出す。本連載と同名の処女作「おっさんは二度死ぬ」(扶桑社刊)が発売中。3月28日に、自身の文章術を綴った「文章で伝えるときにいちばん大切なものは、感情である 読みたくなる文章の書き方29の掟(アスコム)」が発売。twitter(@pato_numeri

pato「おっさんは二度死ぬ」

“全てのおっさんは、いつか二度死ぬ。それは避けようのないことだ"――


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