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獄中で見た性犯罪者たちの異常な素顔。刑務所での更生に期待できないワケ

刑務所の中は、「新しい犯罪の勉強会」

 それにしても、これほどまで常識外れの人物たちと立て続けに接触し、Prisoner氏はいかにして平常心を保っていられたのか? 「さすがに声を荒げてしまったことが一度だけあります。21歳の元大学生で、先輩に連れて行かれたデリヘルで、本来オプションである精液を飲むサービスを無料でしてもらったと。それについて『飲みやがった、汚ねえ』などと笑顔で言い放ったので、つい激昂してしまいまして。 『てめえの汚ねえ〇〇〇〇飲んでくれたんだから、「ありがとうございます」だろうが!』と机を蹴って、説教してしまいました。彼だけはまだ更生の余地があると思ったからこそなのですが……ほかは正直、絶対に治療が必要と思えるレベルでした」  性犯罪者の再犯防止については、GPSによる監視などさまざまな議論がなされているが、一般的な再犯率自体が非常に高い。法務省が2021年12月に発表した「犯罪白書」では、2020年に刑法犯で検挙された人のうち、再犯者率は過去最悪の49.1%。性犯罪者の再犯率については平成27年犯罪白書によると13.9%であり,全再犯を行った調査対象のうちの約7割を占めていた。性犯罪者の矯正・治療はほとんど行われておらず、国内では唯一「NPO法人 性障害治療センター SOMEC」が実施しており再犯率も低いというが、それなりの費用(自費)や年月がかかる。  Prisoner氏はこれについて、以下のように考察する。 「刑務所って、囚人どうしで世間話をするうちにどんどん犯罪の知識が深まってしまうんですよ。いわば犯罪の勉強会みたいになってる。本当に更生させたいならば、私語禁止にすべきでしょうね。一年半しかいなかった私ですらかなり耳が肥えてしまったので、3年、5年いる人は相当の集積があるはずです。  前出のBなどは『こんなところ、ゴキブリに耐性与えているだけじゃないか』と言っていましたが、まさに正鵠を射たりです。再犯した出戻り組が、お茶に覚醒剤入れるととばれないとか、何とかと何とかを混ぜて入れたら一発で女の子が気を失うとか、そういう新しい情報を仕入れてくるので、出所を控えた受刑者はそれを娑婆で試そうとする。そういう悪循環が起きているんです」

反省していない囚人の口癖は「今度こそ捕まらない」

 その際、彼らが共通して言う言葉が「今度こそ捕まらない」なのだとか。  そんな中、なんとPrisoner氏は刑務所内で関係した囚人の本名、連絡先、SNSのスクリーンショットをすべてエクセルにまとめて保存しているという。メモを残せなかった環境で、どのようにして可能だったのか? 「私は、情報を映像記憶として残せるタイプなんです。人の顔や電話番号、免許証やアンケートカードに書かれている言葉などは、パッと見たら忘れない。それでも限界はあるので、たとえば数字なんかは連想記憶にして忘れないようにする。こうした技は、不動産の営業で身についたもの。たくさんの顧客を相手にしているので、一人ひとりの特徴や話したことを覚えてないと仕事にならなかったのです」  そこまでの驚異的な努力を持ってしてまで、囚人の個人情報を保存している理由は「同様に、自分の個人情報も知られてしまっている。しかも相手は全員反省していないので、油断できない。先回りして防衛が必要だからです」という。  犯罪者の世界を知ってしまった以上、もはやかつてのような完全なカタギには戻れないというPrisoner氏。だが、服役した経験は前向きに捉えていきたいと語る。 「実は、再審請求をして逆転無罪を勝ち取りたいと思っているんです。自分がハメられた経験から、今後の自衛のためにも超法規的な視点を多少は持っておいたほうが良いと痛感しました。もちろん、それを性犯罪被害の相談にも生かしていければと思います」 【Prisoner氏】 2013年、親族トラブルが原因で逮捕・起訴され、敗訴。実刑判決を受け地方刑務所に収監。2017年に出所した際の全財産はわずか45000円、その上借金1億円を抱える。現在、自営業をしながらツイッター、公式LINEで性犯罪被害者の相談を行なっている。ツイッター:Prisoner1773 取材・文/日刊SPA!編集部
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