”子供にやさしい”が最大のウリ
筆者はリニューアル前から幼児だった息子を幾度も連れてきたが、本当に子どもにやさしい遊園地だと感心したものだ。東京ドームシティアトラクションズや花やしきといった遊園地に連れて行っても、幼児だった息子が乗れるものは意外なほど限られていて、淋しい思いをさせた。しかしあらかわ遊園ではほとんどの乗り物に乗れるので、あらかわ遊園こそがリアル・親子にやさしい遊園地といえるだろう。
子どもにやさしいといえば、ここあらかわ遊園にはどうぶつ広場が併設されている。ウチの息子もコンディションによっては「のりもの、こわい。のりたくない」という日があり、そんなときはどうぶつ広場へ移動。ヤギやウサギにえさやりをして、楽しんでいたっけ。そういえばリニューアルを機にあの動物たちはいなくなってしまったのだろうか? 探してみると……
いた!
この至近距離でえさやり体験ができるのだ。しかも、料金はたったの100円。他にも大きな公園も併設されているので、お金をかけずに楽しめるところが嬉しい。とにもかくにもリニューアルしてもどうぶつ広場を失っていなかったことが判明。もうひとつ失ってほしくなかったのが、リニューアル前にあったこれらなのだが……
100円でできるセルフわたあめ機に、昭和臭ただようジャンクフード類の販売。2018年にはあった「おでん」も……。
さすがになかった。あとリニューアルしてスタバとか併設されてたら、それはそれで嫌だなあと思っていたのだが、そちらもそちらでありませんでした(笑)。リニューアルを機に失ったものはまだあって、それは園の外に多くあった……
これらの駄菓子屋。あらかわ遊園に来た親子連れを相手に商売していたこれら駄菓子屋のシャッターは閉まったままだった。
リニューアル前最後の営業日に園を訪れた際、寄った駄菓子屋のオヤジに話を聞いたら「2年半は長いねえ」と、苦笑いしながら言っていたことを思い出す。そう、当時は2020年春のリニューアルを目指していたのだ。しかしやって来たのはコロナ禍。長い閉園期間にくわえコロナという不意打ちを喰らえば、それに耐えうる体力がこれら駄菓子屋にあるとは思えない。あのオヤジさんはいま、どうしているのだろう。堅く閉まったシャッターの奥を、伺い知ることはできない。新しくなって、あらかわ遊園と俺たち客が得たもの、失ったもの。いろんなことを考えながら最後、ランドマークである観覧車に乗った。
やっぱマンションビュー(笑)。あらかわ遊園を紹介するネット記事などでは「スカイツリーと、天気がよければ富士山も見れる」とあるが、僕は隅田川とそこに断つマンション群を見るとなぜかホッとする。「何も変わんねえな」と。アラフィフの筆者が子どものころから変わらずにあった、この遊園地。変わらぬ風景があるからこその安心感。
リニューアルを機にいろいろと変わってしまったところはあるが、再オープン当日にファミリーコースターが壊れて乗れないわ、別料金も取らずに動物と触れ合える商売っ気のなさなど、変わらずここは愛らしい。
その昔、東京の遊園地といえば、後楽園遊園地だった。そんな〝じゃないほう〟の遊園地としてひっそりと存在し、リニューアル後の今もどこか懐かしい雰囲気が色濃く残っている。そんなあらかわ遊園地に、この週末にでも訪れてみては? その頃にはもう、ファミリーコースターも稼働してると思うので。たぶん(笑)。
<取材・文・撮影/村橋ゴロー>