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カルト教団が生まれる背景に“日本人の宗教嫌い”。その理由は/僧侶・釈徹宗

日本人が知っておくべき宗教の“救いと毒”

釈徹宗――宗教リテラシーが高まると、今回の問題に関してはどのように見えてくるのですか? 釈:まず、宗教が社会とは別の価値基準で「救い」をもたらしていることがわかってきます。 例えば、社会の一般的な価値では「今、笑っている者」「今、富める者」が幸せですよね。しかし、イエス・キリストは「今泣いているものが幸せである」と、全く逆の価値観を提示しました。浄土真宗の宗祖親鸞が「悪人こそが救われる」と言っているのも同様です。 ――社会でうまくいかない人や、社会との価値観が合わない人にとっては救いになりますね。 釈:これは、非社会性や脱社会性という考え方で宗教ならではの志向です。ただ、社会の価値とバッティングする危うさもあります。一方、旧統一教会などカルト的な性質を持っている教団がやっているのは、脱社会性じゃなくて反社会性を持った集団行動です。これも見分ける必要があります。 ――宗教にあるのは、脱社会的な「思想」や「哲学」であるのに対し、旧統一教会などは反社会的な「手段」であることを切り分けて考えるのは重要ですね。 釈:反社会的な手段で搾取する教団は、結局、金や権力を求めているので、社会の価値観にどっぷり浸かっているとも言えますね。「信仰」や「思想」は、信教の自由に含まれますが、反社会的な「手段」かどうかを切り分けて議論しなくてはいけませんね。

家族がカルトにハマったら

――それでも、カルト教団にハマってしまった人がいたら、周囲はどのように救えばよいのでしょうか。 釈:多くの場合、家族の力が必要となります。しかし、マインドコントロールを解くのは専門家でなければ困難です。そういう教団は、脱会の動きへの対応も教え込みますからね。また、本人の信仰を無理やりに変更させていいのか、という問題もあります。 それと家族がはまっていて、そこから抜け出せない人もいます。いわゆるカルト二世問題です。こちらもサポートが必要です。 ――では、どのようにしたら良いのでしょう。 釈:まずは被害者の会などへ相談されるのが良いかと思います。同じ問題を抱えた人たちが協力し合って、そこに訴訟やディプログラミング(マインドコントロールを解くメソッド)の専門家が関わり、場合によってはメディアの力を借りるなどの方策があります。
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日本の政教分離は特殊
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Boogie the マッハモータースのドラマーとして、NHK「大!天才てれびくん」の主題歌を担当し、サエキけんぞうや野宮真貴らのバックバンドも務める。またBS朝日「世界の名画」をはじめ、放送作家としても活動し、Webサイト「世界の美術館」での美術コラムやニュースサイト「TABLO」での珍スポット連載を執筆。そのほか、旅行会社などで仏像解説も。

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