ニュース

カルト教団が生まれる背景に“日本人の宗教嫌い”。その理由は/僧侶・釈徹宗

日本の政教分離は特殊

釈徹宗――今回の件で、政治家と旧統一教会との関係がいくつも取り沙汰された時「知らなかった」と釈明する議員がかなり多くいました。 釈:日本の政治家の、宗教への見識のなさに愕然としています。宗教を甘く見てますし、宗教リテラシーも身についていないのではないでしょうか。そもそも宗教というのは取り扱い注意案件なんですよ。畏敬の態度と心が重要です。単に宗教を利用しようとして、甘く見ていると、ひどい目に遭います。 ――「政教分離」の原則にも反していますね。 釈:実は「政教分離」の運用は、国によってかなり異なっていて、日本は結構特殊なんです。 ――どのように特殊なんですか? 釈:今の日本の政教分離は、第二次世界大戦後につくられました。その際の重要な論点は、「国家神道対策」だったんです。GHQが「日本がこれほど暴走してしまった原因には、国家神道が政治や教育に強く影響していたからである」と考えたんです。 そこで、教育や政治はもちろん、公の場から国家神道を徹底的に排除します。それだけではなく、宗教すべてを極端に排除したんです。 世界で初めて政教分離を始めたのはアメリカなのですが、アメリカでは宗教的な要素を完全に排除したりはしません。政教分離は“separate of Government and church”で、「政治と宗教」ではなく「政治と教会」です。この場合の教会とは、特定の教派や教団ということです。ドイツでは、むしろ国がきちんと宗教リテラシーについて教育する義務があるそうです。

創価学会が政治の表舞台に出てきたワケ

――極端な政教分離が進められていながら、なぜ、公明党と創価学会など、政治と関係する宗教団体が現れるようになったのですか? 釈:それはある意味カウンターですね。極度に排除されてきた宗教的要素に対して、「公的機関がお祭りや慰霊をするのは政教分離に違反しない」という主張が出てくるわけです。特に、宗教右派と呼ばれる勢力が、保守的な政治家を応援する動きがあります。 公明党と創価学会は、それとは別の動きですね。ここは、かつての言論出版妨害事件から双方の立てつけを変えてきました。今なお、議論の余地があるのですが。しかし、信仰を持った人が政治活動をしてはいけないわけではありません。 ――強烈な排除があったから、揺り戻しのように宗教が公の場に入り込み、バランス感覚を失っている状態ですね。 釈:そうです。そこに旧統一教会が入り込んできた面があります。宗教に関する内容を、極端に教えないので日本人にはその耐性がない。諸外国では、当然のように宗教を教えています。特定の教団を教えるのではなくて、宗教の全体像を教えるんです。 ――宗教全体をマッピングして俯瞰するような教育ということでしょうか? 釈:はい。それをやらないと、宗教が本来的にもつ毒の部分を避けるのが難しいと思います。また、カルト教団やマインドコントロールについても教える必要があるんじゃないでしょうか。 とにかく、グローバル化が進む現代では、多様な宗教を知っておかないと、差別や排除が起きやすくなりますね。日本はこれから外国の人々を大幅に受け入れる方向へと舵を切ったのですから。カルト教団の問題に対しても、多様な人々の受け入れにおいても、宗教リテラシーを高めるという課題は喫緊のものです。  日本人の多くは「宗教」というだけで遠ざけてしまう現状。しかし、そうしたマインドが、カルト教団を育ててきた一因にもなっているようだ。まずは、私たちひとりひとりが宗教リテラシーを高めていく必要がある。 取材・文/Mr.tsubaking
Boogie the マッハモータースのドラマーとして、NHK「大!天才てれびくん」の主題歌を担当し、サエキけんぞうや野宮真貴らのバックバンドも務める。またBS朝日「世界の名画」をはじめ、放送作家としても活動し、Webサイト「世界の美術館」での美術コラムやニュースサイト「TABLO」での珍スポット連載を執筆。そのほか、旅行会社などで仏像解説も。
1
2
3
おすすめ記事
ハッシュタグ