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最終回を迎えた朝ドラ『ちむどんどん』。沖縄での“ホントの評価”とは?

 酷評が相次ぎ、史上最大レベルでネットを騒がせたNHK朝の連続ドラマ小説『ちむどんどん』が最終回を迎えた。視聴者の期待を(主に悪い意味で)裏切りながら展開するストーリーが売りだったが、最終週だけ妙に攻め、最終回ではいきなり40年も時が進んで視聴者を置き去りに。心にモヤモヤも何も残らない摩訶不思議な回だった。  本作は、NHKが沖縄の本土復帰50年を記念して「本土復帰からの歩みを描く、笑って泣ける朗らかな50年の物語」と銘打って制作された。しかし、ときに腹立ちさえ感じさせる家族のドタバタ劇とご都合主義的な展開で“史上最悪の朝ドラ”と呼ばれ、放送後SNSでは「#ちむどんどん反省会」なるハッシュタグのもと罵詈雑言の嵐で炎上騒ぎとなり、毎日のようにネットを騒がせた。関連本も計5冊出たが、「期待が大きかった分、最初の1冊目は売れましたが、あとは散々でした」(ジュンク堂那覇店 森本浩平店長)という有様だった。 ちむどんどん

酷評された“ニーニー”だが、沖縄県内では……

 前半から後半に差し掛かるまでは、まず「ヤンバルの一番星」こと長男の比嘉賢秀(竜星涼)の悪態ぶりにネットは荒れた。同じ相手に三度も詐欺に遭い、母親から金を無心しまくる姿に「沖縄の男性を愚弄しすぎ」「あまりに浅はかな行動で腹が立つ」など批判が殺到した。そもそも竜星涼演じる賢秀の演技を見て「あれじゃ、沖縄の人がかわいそう」と言う書き込みをする人間に限って、実は沖縄を蔑視しているとも言える。他県が舞台なら絶対にそうは思わないはずだ。  実際の舞台である沖縄での反応は、ネットと真逆だった。 「ネットではニーニーのことが酷いとか言っているけど、沖縄の長男はあんなもんね」と沖縄県民からは、反省会で酷評されていた賢秀の自堕落的な性格や行動を咎める声が聞こえてくることはない。県内の小学生にいたってはニーニーの度胸満点で勇ましい姿に「かっこいいー」とさえ映っていた。全国から批判を集めたあの姿は、意外とリアルな姿だったと言えるようだ。  地元の出版社「ボーダーインク」の編集者である新城和博氏も、沖縄の描写について「おばあ二人(あめくみちこ、きゃんひとみ)の姿を見ると愛らしくて、ウートートー(手を合わせる)したくなる。最後、仲間由紀恵さんの大おばあ姿を見られて最高でした」と、沖縄のおばあの良い雰囲気が十二分に滲み出ていて微笑ましかったと高評価する。

“方言”も沖縄では高評価

 また、作中ではヒロインが「ちむどんどん(胸がワクワク)する!」とことあるごとに叫ぶだけでなく「まさかやー」といった方言の連発が気になるという声もSNS上で相次いだ。だが、沖縄県民にとって方言に関しても別段気に触るようなことでもなかったようだ。長女・良子役の川口春奈なんかは方言をよく習得し、三女・歌子役の上白石萌歌も三線をマスターし、沖縄民謡を上手に歌いこなしていた。ただ、母親・優子役の仲間由紀恵に関して一家言ある人もいた。 「仲間由紀恵は、仲間由紀恵さ。彼女をあんなヤンバルの貧しい家の母親役に抜擢しちゃダメ。脇役なのに、どうしても仲間由紀恵に目がいってしまう。でもでっぷりとした後ろ姿は安心できた」(沖縄出身・在住の50代男性)  彼女自身の演技にどうこうではなく、キャストの問題を指摘する声があった。沖縄からしたら仲間由紀恵は、県が生んだ大女優。そんな彼女はキラキラしすぎて今回の母親役に合わないという。木村拓哉を一介の父親役に起用しないのと同じ論調というわけだ。
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ヒロインの沖縄での評価は……
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1968年生まれ。岐阜県出身。琉球大学卒。出版社勤務を経て2009年8月より沖縄在住。最新刊は『92歳、広岡達朗の正体』。著書に『確執と信念 スジを通した男たち』(扶桑社)、『第二の人生で勝ち組になる 前職:プロ野球選手』(KADOKAWA)、『まかちょーけ 興南 甲子園優勝春夏連覇のその後』、『偏差値70の甲子園 ―僕たちは文武両道で東大を目指す―』、映画化にもなった『沖縄を変えた男 栽弘義 ―高校野球に捧げた生涯』、『偏差値70からの甲子園 ―僕たちは野球も学業も頂点を目指す―』、(ともに集英社文庫)、『善と悪 江夏豊ラストメッセージ』、『最後の黄金世代 遠藤保仁』、『史上最速の甲子園 創志学園野球部の奇跡』『沖縄のおさんぽ』(ともにKADOKAWA)、『マウンドに散った天才投手』(講談社+α文庫)、『永遠の一球 ―甲子園優勝投手のその後―』(河出書房新社)などがある。

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