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BTS・ジンの入隊発表。日本人には理解しづらい韓国人の“兵役逃れアレルギー”

BTSの世界的な活躍は免除規定にあたらない?

 軍に入ることが国民の義務となっている韓国ではあるが、例外も存在する。それが“芸術体育要員”と呼ばれる免除規定である。スポーツ選手なら「オリンピック銅メダル以上」「アジア大会1位入賞者」、アーティスト部門では「国際芸術大会で2位以上」「国内の芸術大会で1位」といった条件を満たすと、兵役から免除されるのだ。  BTSはこうした条件には当てはまらないものの、米ビルボードチャートの1位に輝くなど韓国文化を世界に広め、国威宣揚にも大いに貢献した。したがって国際コンクール入賞者と同じ扱いにしてもいいのではないかというのが兵役免除賛成派の意見。BTSの場合はインバウンド需要が喚起されるなど、実体経済に与える影響も計り知れない。 「しかし、そうなると別の問題も浮上してくる。『BTSが免除なら、SEVENTEEN やENHYPENは免除しなくていいのか?』という話におそらくなるはずです。では、どこに活躍したかどうかの評価軸を定めるのか? まさか『MUSIC BANK』や『人気歌謡』のランキングを基準にするわけにもいかないでしょうしね(笑)」

配属先の考慮が落とし所に

 こうした議論が国民の間で活発に交わされる中、とうとう国会も兵役免除条項の改正に向けて動き出した。その過程で「大衆芸術の優秀者は28歳までに行かなくてはいけない兵役を30歳まで延長できる」という兵役法の改正……いわゆる“BTS法”の成立に踏み切ることになる。このあたりは免除賛成派と反対派で拮抗していたため、政府も対応に苦慮した様子が見て取れる。 「結局、手を焼いた政府はアンケートみたいな世論調査を実施したんですよ。その結果、勝ったのは免除反対派。『BTSも軍隊に入れろ』という声のほうがやっぱり最終的には大きかった。だけど同時に『BTSの場合は配属先を考慮すべき』という意見も目立ち、世論全体としてはそこが落としどころになりつつあります。つまり平等主義に基づきBTSも軍隊に入れるけど、彼らが才能ある人材なのは確かだから、なにも一般軍人になる必要はないというわけです」
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兵役逃れがバレて社会復帰できなかった例も
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出版社勤務を経て、フリーのライター/編集者に。エンタメ誌、週刊誌、女性誌、各種Web媒体などで執筆をおこなう。芸能を中心に、貧困や社会問題などの取材も得意としている。著書に『韓流エンタメ日本侵攻戦略』(扶桑社新書)、『アイドルに捧げた青春 アップアップガールズ(仮)の真実』(竹書房)。

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