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BTS・RMの“本音”に透ける韓国アイドルの過酷さは「競争社会の写し鏡」か

BTS“活動休止”報道に騒然

BTS

BTS『BEHIND』JAPAN SPECIAL EDITION/光文社

 世界中に衝撃が走ったBTSの“活動休止”報道。その後、ソロ活動を本格化させるための「チャプター2」であるとの声明が、レコード会社よりリリースされました。    これで騒動は沈静化するのでしょうか? 気がかりなのは、リーダーのRMの思い詰めたような発言です。音楽性やビジュアルの変化に戸惑い、「BTSというグループがどんなグループかわからなくなった」と告白。  K-POPやアイドルシステムについても、「成熟する時間を与えてくれない」、「音楽制作を続け、何かをやり続けなければならない」と語り、大変な心労を抱えてきたことを明かしたのです。  世界を席巻するK-POPのなかでも、BTSは頭一つ抜けた存在です。「Dynamite」や「Butter」でビルボードチャート1位を獲得した功績。加えて、国連でのスピーチにバイデン大統領との面会など、ここ数年は彼らを目にしない日はないほどの活躍ぶりでした。  悪ガキ風のヒップホップグループから、スーツをスマートに着こなす世界的ポップアーティストへと成長を遂げたBTS。それだけに、今回の一件にファンは戸惑っています。    人気絶頂の最中にありながら、なぜ彼らは苦しんでいたのでしょうか? RMの発言には、一人の人間としてどのような思いが込められていたのでしょうか? K-POPの強靭な国際競争力を支えてきたシステムの影を探っていきたいと思います。

過酷な競争は、韓国社会の写し鏡

 イギリスの高級紙「The Guardian」の電子版に『Exploding the myths behind K-pop』(Crystal Tai “Kポップ神話の虚妄を暴く” 2020年3月29日配信)という記事があります。Kポップアイドルになるための過酷な競争が、韓国社会の写し鏡であると論じているのです。  Kポップアイドルとも仕事をしているソウル在住の写真家、ジャスティン・シンはこう語ります。 <競争は幼稚園のころから始まっている。這い上がるには他の園児たちを踏み台にしなけりゃならない。韓国人は生涯にわたって競わされているんだ。常にテストされ、言動や学業の成績によって評価され採点され続ける。超競争社会だね。>(以下すべて筆者訳)    常にヒリヒリする緊張を一身に受けるプレッシャー。加えて、パフォーマンスの完成度を高めるために超人的なハードワークにも耐えなければなりません。アイドル養成学校に通う生徒の40パーセントはソウル郊外から何時間もかけて電車やバスでやってくる。月謝は60万ウォン(日本円でおよそ62500円)。  それでもオーディションに合格するのは、よくて上位の1割。そこに食い込むために、連日夜まで練習に明け暮れる。肉体的、経済的に大きな負担を強いられても人生をかけるのですね。
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アイドルになれたとしても…
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音楽批評の他、スポーツ、エンタメ、政治について執筆。『新潮』『ユリイカ』等に音楽評論を寄稿。『Number』等でスポーツ取材の経験もあり。Twitter: @TakayukiIshigu4

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