ニュース

「2027年リニア開業が困難」は静岡県のせい?トンネル掘削の現場でみたグダグダ

開業予定の2027年まで盛り土工事が続く

工事スケジュール表では、2027年の開業予定年まで工事が続くことになっている

工事スケジュール表では、2027年の開業予定年まで工事が続くことになっている

 かつて崩壊した場所の基部に盛り土をするにあたって、同様の事例を検証したのかと聞くと「していない」という。この前例のない事業に、村やJR東海が構造物の堅牢さや管理体制を強調すればするほど「それほど対策をしないと維持できないような場所に置くのか」と逆に心配になってくる。  そんな中、受け取った資料の中に明記された「今後の予定」の部分にふと目が止まった。盛り土工事のスケジュールが「2026年度」まで続くことになっていたのだ。  これまでJR東海は「静岡の工事が遅れているため、2027年の開業には間に合わない」と繰り返し、この日も古屋佳久・長野県担当部長が同様の説明をした。  しかし長野県側の大鹿村でも2026年度の盛り土工事終了というのでは、2027年3月まで掘削工事が続いている計算になる。さらにJR東海はトンネル掘削後、ガイドウェイの設置や試運転までに2年かかると説明している(昨年12月の県内市町村との意見交換会など)。
盛り土予定地の上部は砂防堰堤が連続し、長年にわたり緑化事業が続いてきた

盛り土予定地の上部は砂防堰堤が連続し、長年にわたり緑化事業が続いてきた

 大鹿村には掘削口となる坑口が4か所あり、地元で生活していると、工事の進捗状況が具体的にわかる。2015年秋着工の予定だった「釜沢非常口」は、保安林解除の地権者交渉などでつまずいて、5年遅れの2020年3月に着手した。その後豪雨災害に遭い、半年以上工事が止まった。  建設工事に不慣れなJR東海の工事は万事こういった感じだ。1年前の岐阜県中津川市でのトンネル死亡事故以来、未着手区間の工事開始の数日後にトンネル事故が発生して工事が止まるといった事態が繰り返されている。  残土置き場についても、計画路線で全部の置き場が決まったわけではないし、各地で盛り土への警戒感が高まり、反対している地域もある。

工事の遅れを静岡県のせいにしている!?

真ん中を流れる小渋川上部の左岸側が盛り土予定地。土砂災害時には村中心部が被害を受ける

真ん中を流れる小渋川上部の左岸側が盛り土予定地。土砂災害時には村中心部が被害を受ける

 筆者は2020年に実際のトンネル掘削の進捗状況を根拠に、「開業は早くても2031年以降になる」との計算式を記事にしたことがある。JR東海のスケジュールも、筆者の予想に徐々に近づいている。トビガス沢にしても、土を置きはじめるのは2024年からで、JR東海の主張に沿えば2年間は土曜運休も不可能だ。  そこで「開業まで1年足らずで間に合うのか」と問うと、JR東海は「(ガイドウェイ設置と走行実験を)並行してやる」という苦しい説明をした。 「静岡県が進まなくても、他の部分では遅らせることができない」(古谷氏)というJR東海の理屈は、杜撰な計画のツケを静岡県のせいにするための方便だった。ここまで工期の遅れを隠すのを見ると、完成するのかどうかすら疑わしくなってくる。
次のページ
住民に周知されず自由に発言ができない、形だけの説明会
1
2
3
おすすめ記事