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90歳の広岡達朗が球界レジェンドを大酷評「原なんか最たる例だ。バカモンが!」

 言わずと知れた球界のご意見番、広岡達朗。御年90歳になる今も舌鋒鋭い“球界への物言い”はとどまるところを知らず、その発言は毎回WEB上で話題となっている。
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90歳になる今も精力的な評論活動を続ける広岡達朗。昨今の球界をぶった斬るWEB連載には、毎回配信先で数百ものコメントが

 野球評論家が数多いる中で、球界復帰を狙ってか各方面に忖度する者も少なくない。ゆえにどうしても奥歯に物が挟まった言い方しかできない。だが、広岡は誰にも遠慮も忖度もしない。王、長嶋を呼び捨てで批評できるのは今や広岡くらいだろう。その痛快極まりない発言が、目の肥えたプロ野球ファンの溜飲を下げている。だからこそ広岡は今も“バズり”続けている。

「どうして門田や江夏や谷沢、田尾と……」

そんな広岡は球界きっての読書家でもあり、著書を30冊近く出している。その中でも今年4月に発売され、自身のインタビューが掲載された『確執と信念 スジを通した男たち』に対して一家言あるらしく、電話口で自由闊達に語ってくれた。 「俺も出ているオムニバスの書籍だけど、どうして門田や江夏や谷沢、田尾と一緒に出なければならないんだ! 田尾を除いて、あいつらは監督を“やったことがない”んじゃなくて、監督を“やれない”んだから」  本書では、広岡達朗をはじめ、門田博光、田尾安志、江夏豊、谷沢健一の確執と信念に迫ったインタビューがオムニバス形式で描かれているが、「監督で三度日本一になった俺とは格が違う!」と毒を吐きながらも、自身以外のラインナップとの接点を回顧する。 「田尾が楽天の監督になってシーズンを半分消化した頃、三木谷(浩史。東北楽天ゴールデンイーグルス会長兼球団オーナー)からGMになってほしいとオファーを受けたことがあった。経験不足の田尾にアドバイスをするのが役割。ちゃんと勝てるコーチを招聘しようと何人かに承諾を取ったんだけど、知らぬ間に田尾に代わって野村(克也)を監督に招聘することになったから、頭にきてGMの話を断った。田尾とは西武時代に監督と選手として一緒だったが、試合前のバスの中でひとり音楽を聴いているのを見て、『最近の選手はこうやって準備するのかぁ』と思ったものだ。一度、エンドランのサインを出したときに見送るものだから呼び寄せて『なんで、打たないんだ!?』と言うと、『相手の癖がまだわかりません』って答えた。そこで、田尾がパ・リーグに来てなかなか打率が上がらないわけがわかった」
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現役時代は天才打者の名を欲しいままにし、引退後は楽天ゴールデンイーグルスの初代監督を務めた田尾安志。『確執と信念』では現役時代から貫き続けたある想いについて吐露

 ‘05年、縁あって三木谷と知り合い、熱く野球談義をすると、感銘を受けた三木谷が非公式で広岡にGMをオファー。教え子でもある田尾のことを思い、広岡は尽力した。勝ち方を知っているコーチ陣を田尾の周りに固めようと、名コーチと呼ばれていた黒江透修や宮田征典に声をかけていた。

「門田は求道者だから指導者には向かない」

「田尾は若いし、まだまだこれからだけど、門田は元気にしているのか!? 体調を崩していると聞いたが、現役時代はいいバッターだった。’83年のオールスターでパの監督を務め、門田を4番に起用した際に『熱があるので誰かに代わってもらえませんか?』と言ってきたことがあったなぁ。しかし『すまんけど、最初だけ出てくれないか』と頼んだ。そしたら、1打席目で、神宮球場の場外まで飛ぶかと思うくらいの特大ホームランを打った。神宮で何百回も試合をやったけど、あんなホームランは一度も見たことがない。小柄だったけどとにかくパンチ力のある良いバッターだった……。ああいったバッティングを追求していく選手は孤高であって求道者でもあるから、指導者には向かない。落合みたいな例外もあるけど、得てしてそういうもの。理論というより己の感性だから」
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王、野村に次ぐ567本ものホームランを放った門田博光。南海ホークス時代に3番打者と4番打者として、監督と主軸として同じ時を過ごした野村克也への愛憎渦巻く想いとは……

 門田博光といえば、’70〜’90年初頭に活躍したパ・リーグを代表するホームランバッター。身長170cmと小柄ながら身体がねじ切れるほどのフルスイングが代名詞で、いつも場外ホームランを狙っていたという。野球マンガの金字塔『ドカベン』の山田太郎のバッティングフォームのモデルでもあり、打撃に関してはあの広岡でも舌を巻くしかなかった。
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広岡達朗が回顧する「谷沢と江夏」
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1968年生まれ。岐阜県出身。琉球大学卒。出版社勤務を経て2009年8月より沖縄在住。最新刊は『92歳、広岡達朗の正体』。著書に『確執と信念 スジを通した男たち』(扶桑社)、『第二の人生で勝ち組になる 前職:プロ野球選手』(KADOKAWA)、『まかちょーけ 興南 甲子園優勝春夏連覇のその後』、『偏差値70の甲子園 ―僕たちは文武両道で東大を目指す―』、映画化にもなった『沖縄を変えた男 栽弘義 ―高校野球に捧げた生涯』、『偏差値70からの甲子園 ―僕たちは野球も学業も頂点を目指す―』、(ともに集英社文庫)、『善と悪 江夏豊ラストメッセージ』、『最後の黄金世代 遠藤保仁』、『史上最速の甲子園 創志学園野球部の奇跡』『沖縄のおさんぽ』(ともにKADOKAWA)、『マウンドに散った天才投手』(講談社+α文庫)、『永遠の一球 ―甲子園優勝投手のその後―』(河出書房新社)などがある。

92歳、広岡達朗の正体92歳、広岡達朗の正体

嫌われた“球界の最長老”が遺したかったものとは――。


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昭和のプロ野球界を彩った男たちの“信念”と“生き様”を追った渾身の1冊


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