バラエティ番組にワイプは必要?日本のテレビマンが“スタジオ”を重視する理由
文/椎名基樹
先日、中田敦彦が自身のYouTubeチャンネルの中で、バラエティ番組において「ワイプ」が必要なのかと提言した。しかし、これはむしろ「ワイプが必要なのか?」というよりも、バラエティ番組において「スタジオが必要なのか?」と問うた方が、日本のバラエティ番組が抱える、問題の本質を語れるような気がする。
現在のバラエティ番組のほとんどが、ロケ物のVTRがメインコンテンツである。このVTRは、比較的ネームバリューの低いタレントが出演するか、ディレクターが声のみで出演する。そして、番組の冠となるようなネームバリューのあるMCや、旬のタレントがスタジオ出演する。スタジオ出演者の役目は「観客」である。
『鉄腕ダッシュ』のように、スタジオ部分が全くない番組もある。また、海外の恋愛リアリティーショーや、サバイバル技術がある人間が過酷体験をする等の「海外バラエティ番組」を見ると、スタジオは存在しない。当たり前であるが、映像コンテンツに必ずしも「観客」は必要ではない。もちろん、それに付随する「ワイプ」も必要ない。
スタジオ出演者は「観客役」であるが、それはあくまで後付けの役目であり、彼らに本当に求められていることは「番組を華やかにすること」「番組にブランド価値を附与すること」だ。結局、他の番組と比較の中で、番組制作をしていくしかないので、自分たちの番組だけ豪華タレントを使わずに地味にする理由も見つからない。
そして、ネームバリューがあり、スキルの高いタレントを呼んだ以上、彼らの力を活かし、できるだけ意味あるスタジオ部分にしたい、というのがバラエティ番組制作者の永年の懸案であり、その答えが見出せないまま、ジレンマを抱え続けているように感じる。
VTRとスタジオの関係性において、私が完成形だと思うのは『さんまのからくりTV』だ。VTRに対して、クイズが出題されて、それに対して出演者が「ボケ回答」する。スタジオ部分が非常に盛り上がる番組だった。
私も、バラエティ番組の制作に携わる中で、この「からくりTV」の方法をスタジオ案として提案したことがあった。しかしそれは採用されなかった。考えてみれば当たり前で、このスタジオの空気感を作り出すことは、明石家さんましかできないだろう。スタジオの盛り上がりを担保する方法が見出せなかった。
「観客役」のスタジオ出演者に求められること
『さんまのからくりTV』は、1つの完成形
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1968年生まれ。構成作家。『電気グルーヴのオールナイトニッポン』をはじめ『ピエール瀧のしょんないTV』などを担当。週刊SPA!にて読者投稿コーナー『バカはサイレンで泣く』、KAMINOGEにて『自己投影観戦記~できれば強くなりたかった~』を連載中。ツイッター @mo_shiina
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