更新日:2023年02月18日 17:59
エンタメ

バラエティ番組にワイプは必要?日本のテレビマンが“スタジオ”を重視する理由

「リアルスコープ」「オモウマい店」の革新性

オモウマい店

中京テレビ 公式HPより引用

『リアルスコープ』にも衝撃を受けた。この番組は、スタジオ出演者が、視聴者と一緒にVTRを見ているような演出、つまりカメラに背中を向けて出演していた。臨場感があり、新鮮ではあったけれど、さすがに「タレントはどんな気持ちがするだろう」と思ったものだ。  最近すごいと思った番組は「オモウマい店」である。あるシーンを見て、この番組の革新性に気がついた。調理場で寸胴のお湯をこぼしたら大量の湯気が立ち上がり、数分間バラエティ番組ではちょっとありえない尺で、カメラが真っ白で何も見えなくなってしまった。  それを見て、ワイプの出演者が爆笑しながら、「何も見えねえじゃねえか!」「こんな編集あるか!」とツッコんだ。ワイプでツッコむからこそ、常識外れで、インパクトがあり、既視感がない映像を流すことができる。スタジオ出演者がツッコむ余白を作ったVTRにすることで、スタジオ出演者のツッコミの腕も活かされている。

バラエティ番組に「スタジオ部分」は必ずしも必要ではない

 考えてみると、この番組は普通は使わないような、例えば「ディレクターが店主家族と、ただ旅行する模様」のVTRを採用して、「こんなテレビ番組あるか!」とタレントにつっ込まれていたことを思い出した。今までにない、VTRとスタジオタレントの関係性を確立している。  他人から見たら、こんな取るに足らない、くだらないことであるけれど、それを発見するまでの試行錯誤を考えると、制作者の奮闘に拍手を送りたくなる。こんなのちょっと頭で考えるだけでは、思いつくことではない。  合理的に考えれば、バラエティ番組に「スタジオ部分」は必ずしも必要ではない。もちろん「ワイプ」も必要ない。必要ないけれど、視聴率を争う上では無くすことはできない。そんな矛盾を成立させようと奮闘することで、新しいものが生み出せることもあるのだ。
1968年生まれ。構成作家。『電気グルーヴのオールナイトニッポン』をはじめ『ピエール瀧のしょんないTV』などを担当。週刊SPA!にて読者投稿コーナー『バカはサイレンで泣く』、KAMINOGEにて『自己投影観戦記~できれば強くなりたかった~』を連載中。ツイッター @mo_shiina
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