日銀の国債大量購入で、ハイパーインフレは起こる?元日銀副総裁がわかりやすく解説
日銀が債務超過になると、破綻するのでしょうか? 「日銀債務超過ハイパーインフレ論」者は、日銀券(紙幣)の交換手段としての信用がなくなり、紙くず同然になるといいます。
ハイパーインフレとは月間インフレ率が50%超のインフレです。月間50%のインフレは年間1万2875%のインフレに相当します。
しかし、日銀券が支払い手段として流通しているのは、「日銀券を他人も交換手段として受け入れる」という信用があるからです。実際に、最近、オーストラリアとカナダの中央銀行が債務超過になりましたが、両国とも通貨は普段どおり流通しています。
日銀券の信用が低下するのは、高インフレになったときです。ドイツでは、1922年1月から1923年12月までに、物価が344億倍にもなる信じがたいインフレが起きましたが、その原因はドイツの中央銀行が1年間に、通貨を43億倍も発行したことにありました。あまりにも多い通貨が少ないモノを買い求めるために使われたのでハイパーインフレになったのです。
しかし、このハイパーインフレ下でも、ドイツ国民はドイツ通貨を使い続けました。それは物々交換が難しいからです。最近1年間の日本の通貨の増減を見ると、前年比の平均は3%増しかありません。増加率が低すぎるため、日銀は2%のインフレ目標の達成に苦労している状況です。
この先、国債が急落する局面が見られたとしても、ハイパーインフレは起こりえません。
東京大学大学院経済研究科博士課程退学。上智大学名誉教授、オーストラリア国立大学客員研究員などを経て、’13年に日本銀行副総裁に就任。’18年3月まで務め、日本のデフレ脱却に取り組んだ経済学の第一人者。経済の入門書や『「日本型格差社会」からの脱却』(光文社)、『自由な社会をつくる経済学』(読書人)など著書多数
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