日銀の国債大量購入で、ハイパーインフレは起こる?元日銀副総裁がわかりやすく解説
私は経済学者として国内外の大学で教鞭をとったりした後、’13~’18年には日本銀行副総裁として金融政策の立案にも携わりました。そこで、感じたのは「経済を知れば、生活はもっと豊かになる」ということ。そのお手伝いができればと思い、『週刊SPA!』で経済のカラクリをわかりやすく発信していきたいと考えました。
日銀は国債残高の55%(’22年9月末)を保有しています。’13年に異次元金融緩和を開始して以降、国会では野党による「緩和をやめるとき、日銀は債務超過に陥り、ハイパーインフレになる!」という追及が盛んです。その急先鋒は、藤巻健史元参議院議員で、議員を辞めた今も、相変わらずの気炎を上げています。
国債を大量に買っている日銀は2%のインフレ目標が安定的になったと判断すれば、国債購入を減らしていきますから、あらゆる満期の国債価格は低下します。これが、現在の金融超緩和政策の出口です。
日銀が保有している国債の市場価格(時価)がその償還価格(政府が満期に国債を買い戻すときの価格=簿価)よりも低下すると、時価と簿価の差はマイナスになります。これを日銀の保有国債の評価損といいます。
雨宮正佳日銀副総裁は’22年12月2日の参議院で、「すべての国債の時価が一律に低下して、その金利が1%上昇すると、28.6兆円の評価損が出る」という趣旨の答弁をしています。日銀の純資産は11兆円程度ですから、評価損を差し引くと日銀は債務超過になってしまいます。だから、「危ない」というのが藤巻氏らの主張です。
しかし、この主張は経済オンチな人を騙す“妄想”にすぎません。
日銀の国債大量購入で、ハイパーインフレは起こる?
東京大学大学院経済研究科博士課程退学。上智大学名誉教授、オーストラリア国立大学客員研究員などを経て、’13年に日本銀行副総裁に就任。’18年3月まで務め、日本のデフレ脱却に取り組んだ経済学の第一人者。経済の入門書や『「日本型格差社会」からの脱却』(光文社)、『自由な社会をつくる経済学』(読書人)など著書多数
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