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維新の圧勝で終わった大阪ダブル選。熱狂を後押しする大阪の「特異な事情」

“失われた30年間”で自民への不信が高まる

では、その前提にある大阪に政治不信が蔓延した理由は何だったのでしょうか? その理由はいくつかありますが、ひとつの理由として考えられるのが経済の停滞です。大阪経済は町工場や中小企業によって支えられてきました。それは“失われた30年間”で完全に沈下したのです。 大阪経済の沈下は政治の不作為の結果です。だから、長らく大阪で政治を担ってきた自民党への不信感が高まったことは自然な成り行きといえます。 しかし、維新政治が始まってから10年が経過しています。この10年間、維新がまったく政治をしてこなかったのならともかく、知事・市長の2トップが手を取り合って政策を進めてきました。 どんな素晴らしい政治でも、万人が是とする政治はありません。また、どんなに優れた政策であっても進め方が拙速だったり、社会状況の変化によってダメな政策に早変わりすることもあります。政治に完璧はありません。

知事・市長を待ち受ける難題

そうしたことを踏まえると、10年が経過した維新政治を点検・総括する時期にきています。街頭演説では、吉村・横山両候補は維新政治の10年間を絶賛し、「過去の大阪に戻すな」と訴えました。 時代は大きく異なっています。仮に非維新の知事・市長が誕生しても昔の大阪に戻ることは考えづらいのですが、それを差し引いても有権者は知事に吉村洋文候補を、市長に横山英幸候補を選びました。これは維新政治が一定の評価を得ている表れですが、当選した吉村洋文知事と横山英幸さんには、10年にわたる維新政治の点検・総括という難題も待ち受けています。 なぜなら、新型コロナウイルスの感染が拡大した2020年以降に身を切る改革で“切り過ぎてしまった”部分があることが表面化したからです。
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今後の4年間で真価が問われる
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フリーランスライター・カメラマン。1977年、静岡市生まれ。行政誌編集者を経てフリーに。首相官邸で実施される首相会見にはフリーランスで唯一のカメラマンとしても参加し、官邸への出入りは10年超。著書に『渋沢栄一と鉄道』(天夢人)などがある Twitter:@ogawahiro

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