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パルコ、地方での閉店が続くなか「熊本で新業態立ち上げ」のワケ。キーワードは“わさもん”

熊本の若者の誇りだったパルコ

パルコ

2023年2月に閉店した津田沼PARCO。津田沼駅前という立地のよさもあり、A館は三井不動産系による複合施設として再開発予定、B館は建物所有者による新たな商業施設「Viit」として営業中だ(写真:淡川雄太)

 熊本PARCOは、1971年10月に開業した地場飲食大手「三陽」による商業施設「新世界会館」の核を担う総合スーパー「長崎屋熊本店」跡を居抜くかたちで1986年5月に開業したもので、建物は地上9階地下1階建、店舗面積は9,051平米。 時代の最先端であったDCブランドや生活総合産業を謳う西武セゾンならではのサービスを導入するなど、九州有数のアーケード商店街「上通」「下通」を結ぶ“街の玄関口”という一等地に相応しい施設として、近隣の百貨店や総合スーパーとの差別化を図った。  熊本PARCO開業当時の熊本市中心部は「シャワー通り」を中心に、大手から地場資本まで個性豊かなセレクトショップが立ち並ぶファッション激戦区であったが、九州各県から福岡に買物目的の日帰り旅行を楽しむ若者(通称:かもめ族、有明族)が目立つようになるなど、福岡一極集中の予兆がみられていた。

ただの地方都市のファッションビルじゃない!

パルコ

九州有数のアーケード街「上通」「下通」を挟む一等地にあった熊本PARCO。前身は旧新世界会館・新世界グリルビル周辺一帯を建替え再開発された「新世界会館サンショッピングセンター長崎屋熊本店」だった(写真:淡川雄太)

 そうしたなか、福岡に存在しなかったパルコは熊本の若者にとっての文化発信拠点として、地元の誇りとして、待ち合わせスポットとして、通町筋側入口のそばにあるモニュメント「グラニットボール(通称:パル玉)」とともに定着。反対運動があった地元商店からも次第に受け入れられることとなった。  パルコ開業翌年の1987年4月には熊本城屋(旧熊本大洋デパート/ダイエー城屋)が新業態「城屋ダイエー」として新装開業したほか、7月にはパルコに接する下通新天街商店街がアーケードを2代目に更新、鶴屋や寿屋(現カリーノ)でも競合を意識したリニューアルが連鎖的に進むなど、活性化の起爆剤としての役割を担ったといえる。  九州有数のアーケード商店街を擁する熊本であるが、1990年代からダイヤモンドシティ(現イオンモール)やニコニコドー(現イズミゆめタウン)によるモール型商業施設が市内バイパス沿いや近隣市町村に相次ぎ開業するなど、他都市同様に郊外化の波が押し寄せることとなった。このような環境下においても、パルコは高感度なブランドを維持しつつ、2011年秋には熊本初となるファーストリテイリング系低価格衣料品店「GU」導入を始めとするフロアの再構築に取組むなど、客層の拡大で生き残りを図ることとなる
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都市商業研究所』。Webサイト「都商研ニュース」では、研究員の独自取材や各社のプレスリリースなどを基に、商業とまちづくりに興味がある人に対して「都市」と「商業」の動きを分かりやすく解説している。Twitter:@toshouken

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