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パルコ、地方での閉店が続くなか「熊本で新業態立ち上げ」のワケ。キーワードは“わさもん”

熊本地震直後の県民の心の支えに

パルコ

全館営業再開直後2016年4月の熊本PARCO。通町筋側入口には「復興支援セール」の掲示も。復興支援セール開始時点、鶴屋は東館中心に暫定営業を実施、カリーノは再開準備中、郊外型施設の相当数は長期休業を発表しているという状況にあった(写真:淡川雄太)

 2016年4月14日、16日の熊本地震被災時には事前の耐震改修が功を奏し、近隣大型店に先駆けて4月24日に全館営業再開を果たす。営業再開時点では一部に応急処置を残していたもの、震災直後の県民の心の支えとして、震災前と変わらない賑わいをもたらした。  その後も2017年秋まで渋谷系レディスブランド「MOUSSY」「SLY」導入を始めとするリニューアルを継続し、郊外に流出していた若者の消費需要を一手に引き受けることで売上の改善を図った。  一方、熊本PARCOは長崎屋時代から50年近く経過する老朽施設のため、三陽による建替意向があったこと、パルコ他店舗と比べ依然として売上下位に属していたこともあり、2019年2月の取締役会で「建物賃貸借契約の満了をもって2020年2月29日に営業を終了」する方針が決まった。  

コロナ禍や規模縮小、競争激化乗り越え復活へ

パルコ

閉店当日2020年2月29日の熊本PARCO。再進出を意識した「パル子、卒業します!」の文字が目立つ。営業開始前から卒業を惜しむ熊本県民で溢れかえっていた(写真:淡川雄太)

 一般的なパルコのコミュニティ型店舗であれば、売上低迷や競合増加を背景に地域から完全撤退する流れとなる。  熊本PARCO周辺でも同社他店舗の例に漏れず、2017年4月には熊本大洋デパート跡地に「ココサ」、2019年9月には熊本交通センター県民百貨店跡地一帯に「サクラマチクマモト」といった都市型商業施設が相次ぎ開業していた。また、2021年4月にはJR熊本駅に「アミュプラザくまもと」の開業予定もあった。  これらの施設はパルコと同等以上の店舗面積に加えて、セレクトショップ大手各社やパルコと親密な「無印良品」(旧西武セゾン系)、「アミューズボーテ」(大丸松坂屋系)といった有力ブランドを導入するなど、パルコ閉店後の“地域一番店”をめざした施設づくりを打ち出していた
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三陽と共同でプロジェクトを始動
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都市商業研究所』。Webサイト「都商研ニュース」では、研究員の独自取材や各社のプレスリリースなどを基に、商業とまちづくりに興味がある人に対して「都市」と「商業」の動きを分かりやすく解説している。Twitter:@toshouken

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