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パルコ、地方での閉店が続くなか「熊本で新業態立ち上げ」のワケ。キーワードは“わさもん”

三陽と共同でプロジェクトを始動

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サクラマチクマモトの開業を祝う2019年9月の熊本PARCO(写真:淡川雄太)

 熊本PARCO跡地の新施設は、商業フロアの面積が従来比、3分の1程度となるため、ファッションビルという業態で地域一番店をめざすような施設づくりは困難といえる。一方、熊本は九州第3の政令指定都市として、官民連携のもと熊本駅白川口周辺や桜町花畑周辺といった交通の要衝を中心に再開発や区画整理、公共交通網の再編が進むなど、ポテンシャルある商圏を備える地方都市だった。  このような背景もあり、パルコは三陽と共同で「(仮称)下通GATEプロジェクト」を始動。熊本市の老朽施設建替促進事業「まちなか再生プロジェクト」による支援を受けつつ、既存のファッションビルとは異なる新業態とホテルを組み合わせた、食とサービス中心の複合施設として刷新する方針を固めることとなる。  プロジェクト推進の過程で、2021年7月には宿泊運営大手「星野リゾート」の参加が決まり、熊本復興への貢献や地域との共生、宿泊フロアとの連携といった施設の方向性が固まったことで、プロジェクトは「地域の資産を活用し、資産をうまく使いながら情報発信をする」「待ち合わせ場所」としての複合施設「Shinsekai下通GATE」として完成に至ったという。

「熊本発」「熊本初」アピール

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熊本交通センター県民百貨店跡地に開業した「サクラマチクマモト」。施設正面の「花畑広場」とともに一体的に整備された複合商業施設だ(写真:淡川雄太)

「Shinsekai下通GATE」の建物は地上11階地下1階建で延床面積は約9,955平米。パルコの店舗面積は3,425平米となる。  低層階はパルコの新業態「HAB@」として、「遊びと暮らしのハブポイント」「まちの止まり木」「また、ここで待ち合わせ。」を掲げ、熊本発祥の世界的豚骨ラーメン店「味千拉麺」が手掛ける新業態「Ajisen World(味千ワールド)」を始め、福岡めんたいフランスパンブームの火付け役となった「pain stock(パンストック)」監修の地元食材ベーカリー「BREADAY(ブレッディ)」、ASO MILKブランドのスイーツ店「阿部牧場」など、熊本発・熊本初を中心とした20店舗を展開する。  商業フロアの面積は熊本PARCOと比べ、3分の1程度となったが、パルコが有する情報を活かし、ラゲッジブランド「BRIEFING」など東京の人気店の誘致を図ったという。  また、熊本PARCOから引続き「POP-UPスペース」を設け、パルコならではのカルチャー発信や地域情報の発信を打ち出すなど「熊本の中心地にふさわしい最新の商業施設」をめざしたとしている。
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HAB@20店舗のうち熊本初は14店舗(新業態6店舗含む)。通町筋側入口そばの「パル玉」はもちろんそのままだ(写真:淡川雄太)

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パルコと星野リゾートのこだわりが
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都市商業研究所』。Webサイト「都商研ニュース」では、研究員の独自取材や各社のプレスリリースなどを基に、商業とまちづくりに興味がある人に対して「都市」と「商業」の動きを分かりやすく解説している。Twitter:@toshouken

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