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パルコ、地方での閉店が続くなか「熊本で新業態立ち上げ」のワケ。キーワードは“わさもん”

パルコと星野リゾートのこだわりが

パルコ

世界15か国に熊本豚骨ラーメンを広めた「味千ラーメン」が世界の人気メニューを逆輸入する新業態「Ajisen World」(写真:淡川雄太)

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全国的知名度を誇る「pain stock」の系譜を継ぐ「BREADAY」とPOP-UPスペース。POP-UPは熊本出身の俳優・高良健吾氏による写真展で幕を開けた(写真:淡川雄太)

 高層階は星野リゾートの都市観光型ホテル九州1号店「OMO5熊本」として、「わさラッシュ!城下マチ」を掲げ、宿泊者はもちろんHAB@利用客を含む来街者だれでも利用可能な「OMOベース」を展開するなど、街全体をひとつのリゾートとして捉える思想のもと、開かれた宿として施設に滞在する楽しみに加えて、街を楽しむための工夫を打ち出す。  パルコは2009年6月まで自社子会社を通じてホテルを展開していたため、調布や名古屋栄には上層階にホテルを備える店舗もある。一方、これらの店舗は商業フロアと宿泊者専用入口が明確に区別されていた。  パルコ新規プロジェクト推進部小林昭夫部長は都商研の取材に対し、商業施設とホテルをストレスなくシームレスで結ぶHAB@のようなコラボの取組みは初と称したうえで、「(熊本PARCO跡という)立地のすばらしさを知っているのが地元の企業、イメージできる地元の方が新しいものを手掛けていく、結果として20のうち8が地場企業、半分以上が九州の企業になった」と、熊本県民によるパルコ跡地への想い入れの強さに期待を寄せた。  取扱う商品はファッションから食物販やサービスに、販促施策も施設主体からテナント主体に変化するもの、熊本初・熊本発の文化発信拠点としての役割は一層強まったといえるかもしれない

熊本の街から“ハブ”ひろがる?

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OMO5熊本では「くまモン」とのコラボも。「くまモンスクエア」改装工事期間の毎週金曜夕方からは、誰でも観覧参加可能な「出張!くまモンスクエアステージ」も開催されている(詳細はくまモン公式サイト「くまモンランド」参照)(写真:淡川雄太)

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OMO5熊本の「凸凹テラス」は熊本城(茶臼山)に呼応するデザインを意識したという。熊本ならではの城のある街並みを楽しむことができる(写真:淡川雄太)

 ここまではパルコの新業態について深く掘り下げたが、熊本で実験的な試みを打ち出す企業はパルコだけではない。熊本には「わさもん」という言葉がある。  わさもんは、農業用語で成熟の早さを意味する「早生」から転じて新しいものを好む気質を示す言葉であり、大手・地場資本問わず、熊本県内では早生の風土を意識したマーケティング・ブランディングがたびたび採られる。星野リゾートが「OMO5熊本」で掲げた「わさラッシュ!」も「わさもん」を由来とする造語だ。  わさもんの街で特徴的なマーケティングを打ち出す大手企業の代表格が「日本マクドナルド」だ。マクドナルドは、1975年11月に九州1号店「マクドナルド熊本大洋店」を開店して以来、熊本をテストマーケティングの場とする戦略を採っている。
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マックも認める“わさもん”の街
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都市商業研究所』。Webサイト「都商研ニュース」では、研究員の独自取材や各社のプレスリリースなどを基に、商業とまちづくりに興味がある人に対して「都市」と「商業」の動きを分かりやすく解説している。Twitter:@toshouken

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