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“12浪”早大生が歩んだ数奇な人生「この世に大学は早稲田しかない」と考えていた

留年を繰り返し8年生に…

2016年4月に30歳で入学を果たし、年齢や国籍を問わない寛容な大学の空気のなかにあって、サークルでは幹事長を任されたりと、田中さんは念願のキャンパスライフを謳歌してきた。 だが、その後は就職活動でつまずき、今度は留年を繰り返して現在8年生になっている。今年は学費を稼ぐために休学したため、来年は実質的には「大学9年生」となる(正確には、8年生をもう一度繰り返すことになる)。 「報道、映像、起業、マーケティング、会計、データ科学、プログラミング、語学などなど、新しい学問について学びたいという気持ちは尽きないですが、卒業を伸ばしている一番の理由は、就活がうまくいかないからだと思います」 周囲と自分を比べ、劣等感に駆られることもある。 「二十歳そこそこの早大生の子たちと比べたら、自分は歳を食っているので就活で同じ土俵に立つ権利はないんです。今も苦しいですけど、学生としての身分の無くなった卒業後はもっと地獄でしょうが

家賃収入が受験料や学費に…

幸いというべきか、実家が不動産を所有しているため、家賃収入の一部が田中さんのもとに入ってきている。 「浪人も長期化しはじめたころに、祖父母が亡くなり、空いた店舗と実家の1階部分をテナントとして貸すようにしたんです。この家賃収入を受験料や学費に充ててきました。今は奨学金に加えて、専門学校の事務のバイト代を足して何とかやりくりしている状態です」 25年3月に、38歳で卒業予定。合計21年にも及ぶ田中さんの浪人生活と大学生活、あまりにも長いモラトリアムの先に、今後どんな人生が待っているのだろうか。 <取材・文/西谷格>
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