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“12浪”早大生が歩んだ数奇な人生「この世に大学は早稲田しかない」と考えていた

毎年多くの受験生を集め、“私学の雄”とも称される早稲田大学。近年は現役志向が強まっているが、かつては浪人を繰り返してでも合格を目指す人が少なくなかった。田中健司さん(仮名・37歳)はその最たるもので、高校卒業後に“12浪”した末、2016年4月に30歳で早稲田大学に入学。現在は8年生で、就職に向けた活動を行っているとのこと。数奇な人生のあらましを、自らの口から語ってもらった。
田中健司さん(仮名・37歳)

田中健司さん(仮名・37歳)

きっかけはカリスマ講師の一言

田中さんは埼玉県出身で、2003年に地元の高校を卒業。早稲田大学を目標にしたのは、高校時代に通っていた予備校がきっかけという。がっしりとした体型の田中さんは、服装や髪型も落ち着いた雰囲気。ただ、37歳という実年齢に比べると、顔つきにあどけなさがある。 「高校はごく平凡な公立校でしたが、現役生向けの予備校の模試を受けたらたまたま良い点が取れたので、早大を目標にしたんです。予備校のカリスマ講師みたいな人から『お前なら受かる!』とマスプロ講義で言われて、その気になってしまったんですよね。今思えば洗脳、そこで変な幻想に取りつかれてしまったのが間違いでした」

「この世に大学は早稲田しかない」と考えていた

現役合格は果たせず、1浪して日東駒専に進学。だが、父親との会話がきっかけで仮面浪人を決めた。 「父親は強固な学歴至上主義者なんです。親子仲は最悪で、今は絶縁しています。父親の出身大学は日東駒専なんですが、そのくせ私には『お前は金をかけて予備校まで行ったくせにそんな大学止まりか。もっとマシな大学入れなかったのか』と馬鹿にしてきたんです。その言葉にムカついて、絶対早稲田に受かってやると決めました」 当初は1年で合格する予定だったが、宅浪での2浪目もうまくいかず、その後も浪人生活を続けることに。 「実家にいると、インターネット。マンガやドラマやゲーム配信を好きなだけ見てしまい、ダレにダレてしまったんです。3浪目は自分だけの環境を作ろうと思って一人暮らしを始めたのですが、結局状況は変わらず勉強に身が入りませんでした」 受験科目は英語・国語・世界史で、法学部や文学部、文化構想学部を中心に、毎年4学部ほどを受験。2浪目以降、早稲田以外には一切願書を出さなかった。 「この世に大学は早稲田しかないという考えでした」
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同級生が社会人になっていくなか、6浪突入
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