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早朝の歌舞伎町が放つ怪しい光は、まるでキラキラ輝く汚物のようだ

【別バージョン】おっさんは二度死ぬロゴ_確認用おっさんは二度死ぬ 2nd season

早朝の歌舞伎町、交縁で見たものは

 早朝の歌舞伎町はカオスだ。  もちろん、歌舞伎町は常にカオスで、むしろ夜から深夜にかけての方がその混沌の度合いが強いのだろう。この間、深夜に歌舞伎町を歩いていたら、セーラ服を着たおじさんが猛烈ダッシュで逃げまどい、それを地下アイドルみたいな衣装を着たおばさんが追いかけていた。  普通に生きていたらお目にかかれないカオス、それが歌舞伎町の特徴だ。  たしかに、深夜の歌舞伎町はカオスそのものだけれども、早朝には早朝の、爽やかな朝だからこそ強調される不気味な混沌みたいなものが存在する。  とある事情、というか新宿で酔いつぶれて帰れなくなってしまい、仕方なしにサウナに泊まることの多い僕は、早朝にこの歌舞伎町を闊歩することが多々ある。家が遠いからちょっと酒席が盛り上がるとすぐに帰れなくなるのだ。

朝は朝なりに別の混沌が存在する

 宿泊を経て、朝5時や6時にサウナを出ると、そこには夜の顔とはまた違った歌舞伎町が存在する。  ラブホテル街とホスト街の狭間みたいな場所に存在するサウナ、そのエントランスから続く階段を降りると、まず50%くらいの確率でTMレボリューションの格好をしたおじさんを目撃する。これまで20回くらいこのサウナに宿泊しているが、10回は見ているのでやはり半々くらいの確率だ。TMレボリューションのおじさんはフラフラと所在なくホテル街を闊歩していて、その目的などは全く分からない。  サウナの前にはコンビニがあるのだけど、早朝にここにたむろしている人は基本的に思い通りの夜を過ごせなかった人々だ。ストロングゼロの缶を握りしめて店の前にしゃがみ込み、狂ったようにスマホと睨めっこしている。怒りながらどこかに電話をかけている女性もいたりする。高山VSドンフライみたいに殴り合っている女性もたまにいる。  かと思えば、夜を超えてファイナルファンタジー7のクラウドみたいな髪形も崩れてきたホストの集団が、今日も疲れたなみたいな感じでコンビニ中華丼を購入している光景も見られる。あまりにカオスだ。  あと、たまにコンビニ内で警報みたいなものがけたたましく鳴っているけど、誰も気にしない。店員すら気にしていない。なんなんだという状況に出くわす。  警報をBGMに中華丼を持ったホスト集団、半裸みたいな服を着た怒り狂った女性、その横をTMレボリューションが通りすぎ、その先の電柱には「ヘドロ」と落書きがされている。それが早朝の歌舞伎町だ。 図1
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「交縁」の場で複雑な気分になる
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テキストサイト管理人。初代管理サイト「Numeri」で発表した悪質業者や援助交際女子高生と対峙する「対決シリーズ」が話題となり、以降さまざまな媒体に寄稿。発表する記事のほとんどで伝説的バズを生み出す。本連載と同名の処女作「おっさんは二度死ぬ」(扶桑社刊)が発売中。3月28日に、自身の文章術を綴った「文章で伝えるときにいちばん大切なものは、感情である 読みたくなる文章の書き方29の掟(アスコム)」が発売。twitter(@pato_numeri

pato「おっさんは二度死ぬ」

“全てのおっさんは、いつか二度死ぬ。それは避けようのないことだ"――


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